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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】ブロックチェーンは社会インフラ、中央集権型の社会から管理者のいない社会へ『WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?』

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振り返ればこの1年もGAFAの話題には事欠かず、関連書籍も更に増え続けている印象だ。

この圧倒的な強者の登場以降、世界は市場の公平な競争を懸念し、
GAFA時代をどうより良く生きるか、あるいは10年後のGAFAを探せといった議論を耳にするようになったが、
そんな風潮のなか、個人的に「これは面白い!」というテーマに出会った。

ブロックチェーンである。

「今さら?」と思われるかもしれないが、これまで金融文脈で語られることの多かったブロックチェーンを【社会をどう変えていくものであるのか】といった視点でアプローチし、ブロックチェーンの得意・不得意も丁寧に洗い出しながら、その可能性について説いている1冊なのだ。

例えばGAFAのように、何か圧倒的パワーを誇る強者が存在しても、
その一方で、全く性質の違う社会が並行していくとしたら...?並行していくのだろうか...?!
そんな未来を想像しながら、一気に読んでしまった。

ITがより
「人の機能に近づき」
「人のデータをとり」
「超スマートな社会を実現する」方向へと進化中であること、

その流れの中で
●IoT(データをとる)
クラウド(取得データを置く)
ブロックチェーン(データを仕分けし、鍵をかけて保存する)
●AI(そのデータを世の中の役に立つよう活用する)

という【4種の神器】が各役割を担い、ITイノベーションをもたらすのだと理解が深まる。
点と点で何となく認識していたものが線でイメージできるようになると、テンションがあがってくる。

ブロックチェーンの技術は
・暗号技術 
・コンセンサスアルゴリズム 
・ピア・トゥ・ピア(P2P
・DLT(分散型台帳技術) 

の4つからなり、これらの特性からブロックチェーンは「信用」を提供するのだと、フムフム。

ブロックチェーンの最大の運用事例はビットコインであったが、ブロックチェーンに関わる人は「仮想通貨派」「テクノロジー派」に分かれていて、著者は後者。当初シェアリングエコノミーを研究していたそうだが、その行きついた先がブロックチェーンであったと。シェアリングエコノミーのようなビジネスモデルはブロックチェーンによって進化を遂げると確信が持てたそうだ。

と段階を追いながら「なぜ、ブロックチェーンなのか」という本題に向かっていくのだが、
結論「ブロックチェーンは人類に、管理者のいない社会をもたらす」のだと。

それは一言でいって「信用」のあり方が変わるというものである。

これまで「信用」とは、特定の管理者がいる中央集権型の社会の中で成り立っていたが、
こうしたITの技術が信用をつくることで、管理者のいない分散型・自律型のネットワークシステムが
私たちの新しい「信用」になるであろう、というのである。

確かに現時点で、世界は中央集権的に出来ている。
GAFAでなくとも、誰か偉い人や大きな組織に権力と責任が集中し、そこに情報が集まるのが現代社会だ。

著者は「AIに注目する人は多く、ブロックチェーンに注目する人はそこまでに至らない」という。
その理由について、「膨大なデータを原則的に一か所に集約するAIは中央集権型。今の世の中に理解されやすいのでは?」
という迫るあたりは、なるほどと感じさせるものがある。

最後は、具体的な活用例として、電気自動車(EV)の充電スタンドのネットワーク化など
いくつかのアイディアと共に述べられていたが、個人的にはどれも大変興味深いものであった。

この本のお陰で、この手の話題に対するアレルギーが少し緩和しそうだ。
何よりテクノロジーが社会の仕組に融合した世界をほんのりイメージでき、ワクワクする。
ブロックチェーン初心者にとっては、入門書としておススメできそうな1冊だ。

 

WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?

WHY BLOCKCHAIN なぜ、ブロックチェーンなのか?

  • 作者:坪井 大輔
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2019/07/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)