HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】サービス業のパラドックスを解き明かす - 山内裕『闘争としてのサービス』

皆さんこんにちは。山内裕 京大准教授による『闘争としてのサービス』は、サービス業における逆説的な現象と戦略に注目しています。「細やかに気配りし徹底的に尽くす」という従来のサービス提供理念が、実は最高の顧客体験を創出する上で逆効果になり得ると提案しています。

真逆のアプローチ
著者は、高級サービスにおいて「顧客の期待を超える」という目標が、実際には顧客満足度の低下につながることがあると指摘します。これは、顧客が単にサービスの受け手ではなく、サービス価値創造過程の能動的な参加者であるという視点に基づいています。サービス提供者と顧客との間で繰り広げられる「闘い」(勝ち負けではなく、競い合う意味で)は、互いに価値を高め合い、真に印象深い体験を創出する機会を提供します。

サービスのパラドックス
「満足させようとすると客は満足しない」というパラドックスは、サービス業界における不思議な現象です。提供側が客を満足させようと頑張ると、その瞬間上下関係が生まれます。客の立場が上になり、下の立場から受けるサービスの価値を低く感じます。顧客とサービス提供者の間の相互作用は、サービスの質と顧客の満足度を決定づける重要な要素です。高級サービス業界では、この相互作用が特に顕著であり、サービス提供者が顧客の期待を超えることを目指すのではなく、共に価値を創造しようとする姿勢が重要になります。

実体験の価値
『闘争としてのサービス』の議論は、実際に高級店を訪れることによってより理解できるものだと思います。この書評を書く過程で、高級サービス体験の背後にある哲学や顧客との深い関係性の構築に焦点を当てることの重要性が明らかになりました。実際に体験することで、サービス提供者と顧客の間の「闘い」がいかにして双方にとって有意義な体験を創出するのかを理解することができるでしょう。どなたか僕を高級店に連れていってください。

 

 

【書評】顧客体験をデザインする力 - 『マッピング・エクスペリエンス』

皆さんこんにちは。ジェームズ・カールバックの「マッピング・エクスペリエンス」は、企業が顧客体験を根本から理解し、見える化するための指南書です。本書は、顧客中心のビジネス戦略を深く掘り下げ、顧客が直面する問題を明確にし、それらに対処する方法を提供します。カールバックが提案する「連携ダイヤグラム」の作成手法は、今日の競争が激しい市場において、企業が顧客満足度を高めるための鍵となります。

連携ダイヤグラムとは何か?
連携ダイヤグラムには、カスタマージャーニーマップ、エクスペリエンスマップ、サービスブループリントが含まれます。これらのツールを使用することで、企業は顧客の経験を視覚的に表現し、サービスの改善点を特定することができます。カスタマージャーニーマップは顧客の購買過程を追跡し、エクスペリエンスマップはより広範な顧客の行動と感情を捉え、サービスブループリントはサービス提供過程の詳細を描き出します。

ダイヤグラム作成のプロセス
カールバックは、連携ダイヤグラムを作成する際に、初めに「たたき台」となるダイヤグラムを作成し、その後ワークショップでこれを深化させるという手順を推奨しています。このアプローチにより、チームは共通の理解を築き、顧客体験の改善に向けた具体的なアクションプランを立てることが可能になります。

まとめ
「お客様の声を大切にします」こう謳っている企業は多いでしょう。しかし、本当に顧客の声が聞こえているか、姿が見えているのか。この本は、企業が顧客の声を真に聞き、理解するための枠組みを提供します。顧客体験の改善は一夜にして成し遂げられるものではありませんが、「マッピング・エクスペリエンス」はその第一歩となるでしょう。

 

 

【書評】若き冒険家、Goの手記『草原の国キルギスで勇者になった男』

皆さんこんにちは。最近、春間豪太郎著の「草原の国キルギスで勇者になった男」を読みました。この本は、中央アジアの秘境、キルギスを舞台にした冒険譚で、著者が「ゼルダの伝説」に憧れ、満たされない日々を送っていた学生時代、行方不明の友人を探しにフィリピンに行ったことから突如冒険に開眼し、キルギスに降り立つというストーリーです。

この手記は、不遇な環境にあっても、自分の夢や目標に向かって進む力が、人間の持つ驚くべきバイタリティとチャレンジ精神を象徴しています。春間豪太郎氏のように、自分の情熱を追求し、困難を乗り越えて目標を達成する人々の物語は、大変尊敬できますし私にとって大きな励みとなりました。

冒険は確かに危険を伴いますが、新たな環境や未知の事象に直面することで、自分自身を試し、自己の限界を押し広げることができます。春間豪太郎氏が冒険の中で出会った善人と悪人、そして動物たち。それぞれから学んだ経験は、彼自身の視野を広げ、人間理解を深める貴重なものとなったことでしょう。

「草原の国キルギスで勇者になった男」は、冒険の本質や、人間の成長と責任について考えるきっかけとなる一冊です。この本を読むことで、私たちは自分自身の生き方や価値観を見つめ直す機会を得ることができます。
そして、この物語を読むと、自分には無理だという歯痒さと憧れが入り混じった感情が湧き上がります。それは、私が日常生活の中で経験することのできない刺激や、心の奥底に眠っているかもしれない冒険心を刺激し、憧れの対象となりました。いつか春間豪太郎氏のように、または全く違うスタイルで、冒険の道を進んでみたいものです。

 

 

【書評】中間管理祝のための攻略本『中間管理職無理ゲー完全攻略法』

次から次へと仕事が増える!。誰も考えて動けない!。熟練者がいない!。中間管理職の皆様色んな悩み事はないでしょうか。そんな仕事の無理ゲーの攻略本が本書だ。中間管理職の大体の悩みは本書で解決するだろう。

 

本書は中間管理職にとってはあるあるの無理ゲーに対して、攻略法を完結にあげるような内容である。普段あまり本を読まない人、とにかく答えが欲しい人は特におすすめかもしれない。

 

例えば新人が来たが難しい仕事が多くやらせる仕事がないというとき。こういう時はベテランとペアを組み仕事を進めると良い。ペアを組むと新人も迷惑をかけることの負担が分散する、またベテランにとっても教える機会となる。

 

例えば部下が考えてくれず結局自分が考えている。この場合は2番手だけで物事を決める会議を開催すると良い。そうすることで次第に自分で考えることができるようになる。

 

さて、とにかく悩み事の尽きない中間管理職の皆様、悩むならとりあえず読もう!

 

中間管理職無理ゲー完全攻略法

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【書評】婚外子がむしろグローバル!?『損する結婚 儲かる離婚』

結婚という制度をビジネス視点から捉え、「奥さん」はリスクであると解き、世界の統計でみれば、婚外子の方がむしろグローバルなんだと気付かされる、目からウロコ的な1冊です。

いきなり冒頭から結婚と離婚に関わるお金の動きを、慰謝料、財産分与、婚姻費用、養育費の視点から分析し、その中でも最も熱が入って説明さらてるのがコンピ地獄という名の婚姻費用。

離婚係争が始まれば、基本的な2人の財産は折半の考えのもと、財産の差し押さえが法的に可能になります。本書では様々なケーススタディから係争を長引かす(ゴネまくる)ことで浮気などで一時的に支払われる慰謝料よりも継続的に支払われるコンピの方が得という身も蓋もない考え方がとても合理的で面白いです。

経済合理性からみた離婚係争をリスクとリターンの金融関係と捉え、現在の日本の少子化は結婚という金融商品の欠陥と位置付け、結婚して子供をつくる選択と、しなければ子供を作れない(社会的に容認しない)二社択一で中間選択肢がポッカリ空いてることが問題だとしてます。

つまり婚外子の普及です。

世界の婚外子率を見ると、日本と韓国が2%でアメリカ、カナダが30〜40%、ヨーロッパ諸国が約50%、1位はアイスランドの67%となり日本の婚外子率の低さが際立ってます。

本書の締めくくりは、結婚以外の男女交際と家族のありかたをパターン別に分けて交際や家庭の作り方には様々な形があるのがスタンダードだと説いてます。

大事なのは多くの日本人は家庭を作るためには結婚しかないという固定観念を捨てること。

自由な恋愛市場では、結婚制度は形骸化し婚外子が普通になる世のトレンドに、日本も乗っていくこととなる説明には納得感があります。

HIUメンバーにはこの本に書かれているような多様な価値観を持った人が比較的多い感じはしますし、そんな社会になっていくことが望ましいなぁと思える一冊です。

発売日:2017/02/14
著者:藤沢数希
新潮社

 

 

【書評】神の雫続編が始まった!『神の雫 deuxieme(1)』

 

神神咲雫と遠峰一青がワインを巡って死闘を繰り広げる作品だが、前作で遠峰一青が亡くなってから時が経った世界が舞台。遠峰の娘が主人公となった物語だ。

 

物語の舞台はパリ。遠峯の娘は18歳になり、始めてワインを飲むところから物語は始まる。遠峯が持っていたもの、遠峰が持っていなかったもの全てを持っているのがこの少女青夜(せいや)だ。

 

青夜は遠峰一青の遺言を引き換えにコンクールに出ることになる。

 

さて、本当に待望した続編だ。単純に評者も嬉しい!

 

 

【書評】経済学とは何か?コンパクトに網羅 - 『経済学と合理性 経済学の真の標準化に向けて』 

本書は経済学史、意思決定理論、行動経済学、実験経済学、ゲーム理論マクロ経済学と経済学全体をコンパクトながらも網羅している。

本書の軸となる「合理性」は「選択肢にきちんとした優先順位を付けられる」ことであり、「ミクロ的基礎付け」とは家計や企業などの経済主体の最適化行動からマクロ経済を分析することと定義されており、理論や仮説、現実の観察やデータを用いた検証などを具体的かつ正確さを損なわないように丁寧に解説されているため経済学入門者である私でも最後まで立ち止まらずに読み進めていくことができた。

本書で私が一番注目したのはゲーム理論、ゲームの表現形式と各プレイヤーが合理的であるという共有知識を持つ事自体を合理性の一形態として解説しているところだ。
なぜならば、共有知識という概念は、知識の公理を満たす知識関数から定義されるため、選好関係上の公理から定義される伝統的な合理性概念とは異なる性質のものだからである。
さらに、利他的選好、質的応答均衡、帰納ゲーム理論まで解説されており、非常に興味深く読み進めることができた。

本書を読了して、コロナ禍での社会の変化、ウクライナ侵攻やパレスチナ紛争による世界経済の大きな変化など、今まで以上に未来への不透明さが増している世界動向の中で、自分たちのビジネスを確立していくためには、このような理論を用いて具体的な数値・データに基づいた意思決定をする重要性を認識することができた。

 

 

【書評】英国人による日本経済再生の物語 - 『新・日本構造改革論』

皆さんこんにちは。
デービッド・アトキンソンの「新・日本構造改革論」を読み終えました。この本は彼の自伝的な書籍で、日本経済を救った経緯や政権との関わりなどを初めて明かしています。

アトキンソンの生い立ちから学生時代、そして日本での留学経験や証券会社での仕事に至るまで、その経験は非常にユニークで、多くの読者にとって興味深いものであることでしょう。
特にエキサイティングだったのは、彼が不良債権処理やメガバンク再編における銀行との戦い、特に三菱銀行との戦いについて語った部分です。さらに、GS社内でのいざこざも最後はスカッとする結末で、まさに事実は小説よりも奇なりという感じでした。

彼の視点から見た日本経済や銀行業界の現状と、それに対する彼の提案や解決策についても、多くの洞察を得ることができました。
彼が指摘する「合成の誤謬」についても印象的でした。これは一部の事例を全体の傾向として一般化する誤りを指す概念で、日本社会の多くの側面で見られる傾向です。
このような「合成の誤謬」を避けるためには、情報を受け取る際には常に批判的な視点を持ち、一部の事例が全体を代表するものであるとは限らないということを理解することが重要です。また、情報源が信頼性のあるものであるかどうかを確認し、必要であれば複数の情報源から情報を得ることも重要です。

「新・日本構造改革論」。アトキンソンの視点から見た日本の現状と、それに対する彼の提案は、私たちが日本経済を理解し、それを改善するための新たな視点を提供してくれます。

 

 

【書評】SNS時代のマーケティング指南 - 『ウソはバレる』

皆さんこんにちは。イタマール・サイモンソンとエマニュエル・ローゼンによる著作「ウソはバレる」は、現代向きにソーシャルメディアマーケティングの指針を示しています。インターネットの普及による情報の透明性が高まり、消費者の製品やサービスに対する見方が根本的に変わった現代社会において、企業がいかにして消費者と向き合うべきかを説いています。

従来のマーケティング理論では、ブランドの構築や顧客との絆が成功の鍵とされてきました。しかし、この本ではそうした考え方が現代社会では通用しなくなっていると主張します。理由は、消費者が情報を自ら調べ、レビューや評価を共有することで、企業の言葉よりも第三者の意見を重視するようになったからです。

POM(過去の嗜好・経験、他者の情報、マーケターからの情報)フレームワーク

本書の中心となる考え方は、消費者の意思決定に影響を与える「POM(過去の嗜好・経験[P]、他者の情報[O]、マーケターからの情報[M])」フレームワークです。特に「他者の情報(O)」への依存度が高まっており、この変化はマーケティング戦略において重要な意味を持ちます。

ソーシャルメディアの役割

「ウソはバレる」によれば、ソーシャルメディアはマーケターからの情報提供のチャネル(M)としてではなく、消費者同士の情報共有の場(O)として活用することが推奨されます。これは、ソーシャルメディア上での消費者の声が製品やサービスの評価に大きく影響する現代のマーケティング環境を反映しています。

「ブランド論」との関連

以前紹介した「ブランド論」では、「ブランド・エクイティ」の要素の一つとして「ブランド連想」の価値が強調されていました。しかし、「ウソはバレる」で述べられるように、レビューサイトの登場によってその「ブランド連想」の価値が徐々に変化していることを考えると、現代のマーケティング戦略では、自社製品の「他者からの情報(O)」への依存度を理解し、POMのバランスを考慮して戦略を立てる必要があることがわかります。

「ウソはバレる」は、現代の情報溢れる社会において、消費者と企業がどのように関わり合うべきかを考えさせてくれる一冊です。従来のマーケティング理論に留まらず、変化する消費者の行動や情報の流れを理解し、それに適応することの重要性を教えてくれます。

 

 

【書評】プロレスから古典への情熱 - 馳浩『古典、簡単じゃないか』

プロレスラーから参議院議員へ、そして現在は石川県知事として活動する馳浩氏は、多彩な経歴を持つ人物です。そんな彼が「蛍雪時代」という雑誌の連載をまとめた一冊の本、それがこの『「古典」簡単じゃないか』になります。馳氏の人間性が感じられる熱意あふれる文章は、読者を魅了し、共感を生む力を持っています。

馳浩氏は、野球やサッカーで名を馳せる星稜高校で国語教員としても勤めていました。私の兄が星稜高校の受験をした際、試験監督は馳氏だったそうです。生徒への受験指導も手がけていた馳氏の知識と経験は、この本にも反映されています。彼の深い古典文学への愛情と知識が、受験のポイントや古典文学についての考察とともに綴られています。学生時代に全集を読み尽くしていたという馳氏の豊かな体験が、この本の中に生きています。

「古典文学」と聞いただけで頭が痛くなる人も、既に興味を持っている人も、この本は一読の価値があります。古典の謎とその歴史的背景が、文学と歴史を織り交ぜながら鮮やかに描かれています。�具体的には、宮廷の事情や男女関係の話題が巧みに交えられ、読む人を引き込む内容となっています。

例えば、万葉の額田王の悲劇や、紫式部清少納言を批判するエピソード、兼好法師を700年前のビートたけしに例えるといった話題が取り上げられています。また、竹取物語を輸入貿易に対する告発書と解釈する視点や、和歌山の日高川の大蛇伝説(清姫安珍)にも触れています。

この本は、プロレスファンから受験生、古典文学の愛好者まで、様々な人々にとって魅力的な一冊となっています。その豊かな経験と深い洞察力から生まれたこの本を通じて、新たな視点で古典文学を楽しむことができます。