皆さんこんにちは。山内裕 京大准教授による『闘争としてのサービス』は、サービス業における逆説的な現象と戦略に注目しています。「細やかに気配りし徹底的に尽くす」という従来のサービス提供理念が、実は最高の顧客体験を創出する上で逆効果になり得ると提案しています。
真逆のアプローチ
著者は、高級サービスにおいて「顧客の期待を超える」という目標が、実際には顧客満足度の低下につながることがあると指摘します。これは、顧客が単にサービスの受け手ではなく、サービス価値創造過程の能動的な参加者であるという視点に基づいています。サービス提供者と顧客との間で繰り広げられる「闘い」(勝ち負けではなく、競い合う意味で)は、互いに価値を高め合い、真に印象深い体験を創出する機会を提供します。
サービスのパラドックス
「満足させようとすると客は満足しない」というパラドックスは、サービス業界における不思議な現象です。提供側が客を満足させようと頑張ると、その瞬間上下関係が生まれます。客の立場が上になり、下の立場から受けるサービスの価値を低く感じます。顧客とサービス提供者の間の相互作用は、サービスの質と顧客の満足度を決定づける重要な要素です。高級サービス業界では、この相互作用が特に顕著であり、サービス提供者が顧客の期待を超えることを目指すのではなく、共に価値を創造しようとする姿勢が重要になります。
実体験の価値
『闘争としてのサービス』の議論は、実際に高級店を訪れることによってより理解できるものだと思います。この書評を書く過程で、高級サービス体験の背後にある哲学や顧客との深い関係性の構築に焦点を当てることの重要性が明らかになりました。実際に体験することで、サービス提供者と顧客の間の「闘い」がいかにして双方にとって有意義な体験を創出するのかを理解することができるでしょう。どなたか僕を高級店に連れていってください。