本書は、4年前の東京都知事選挙前に出版されたものであるが、いまだに東京都に大きな変化は見られない。そこで、今回は6つの新提言を加えアップデートされた。
評者は、秋葉原と両国で着物やリメイク品を販売するPOP UPストアを運営しているが、外国人観光客の増加により、非常に面白い経験をし、東京都には様々な可能性がたくさんあるとつくづく感じる。
例えば、コロナ前には別メンバーと浅草で着物を2,000円で販売しようとして、一枚も売れなかったが、現在はその10倍の金額でも売れている。商品は当時の在庫のため、全く同じもの。また、着物以外にも、帯や羽織も販売し、外国人に人気があると知人に話したところ、即大量に仕入れ、教えた価格で販売し、たったの数ヶ月で500着売れたという。さらには、別の知人も、あっという間に段ボール数箱分を捌いたそうだ。もちろん東京で。
このように、リスクを恐れずにすぐに行動に移した人たちは上手くいっているが、世の中の大半の人は、安全牌の中でしか動かないため、結局何も上手くいかない。チームで動くとなると、やらないという選択肢は、甚だ理解し難く、結果として何度もチャンスを逃し、いつも歯がゆい思いをしている。それはまるで東京都のようでもある。
外国人観光客は何を欲しがっているのか、いくらで売れるのか。同じものを求めている人が多ければ、その理由を直接聞いてみたり、それを実際に仕入れて販売し、検証してみるのは非常にやりがいもあり、面白いものなのだが。
とは言え、インバウンド向け店舗は、たった1年ほどの出展にもかかわらず、かなりの情報が積み上がって来た。現状に囚われても仕方がないので、今後は、自分の直感を信じ、個人で動いた方が早いのではと思っている。もちろん、同じ方向を向き、興味がある人と情報を共有できれば、新たなビジネスチャンスが生まれるだろうし、協力者があらわれれば、ありがたいと思う。今回の出展で得られた情報をすぐ次の出展に活かし、1日でも早く、タイムリーに行動するには非常にいい時期でもある。
さらに、東京都を含め、日本全国には世界に誇れる伝統的な技術や作品などがたくさんある。ここ数年で職人の知り合いもでき、僅かながらだが着物関連以外の商品も個人的に仕入れ販売してみると、外国人にも気に入られている。しかし問題は、どの分野でも職人が高齢(70代〜80代)となり、この先、数年持つかどうかといつも聞かされることだ。
また、世界の複数の有名ブランドから依頼を受け、世界で唯一の技術を使った製品を作る人でも、苦労が絶えず、可能であれば明日にでも辞めたいし、子供には絶対に継がせたなくないという。いつも様々な職人と話していて思うことは、製品を作る能力とビジネスをする能力は全く別物。話をするのも苦手な職人よりも、ビジネスに長けた人が販売や経営をした方がいいと思う。
どれをとっても、今がチャンスだとつくづく思う。日々素晴らしい技術が失われているのも事実である。まずは、東京都が変わることにより、日本全国が変わる。評者も枠にとらわれず、行動してみるいい機会なのかもしれない。