著者が、広告代理店勤務の経験を活かして始めた仕事は「ひとり代理店」。
夫の転勤に帯同され、仕事を辞めた後に、元顧客から仕事を依頼されたことが切っ掛けだ。
店舗は自宅、社員の雇用はなし。
クライアントと発注業者の間に立って、納品物に付加価値をつけることで顧客の信頼を勝ち取ってきた。
著者の手法で興味深かったことは、仕事の受注とクライアントへの提案方法である。
周りの人に役立つ情報提供と、人材を紹介することで人間関係を広げながら、顧客となり得る人に「売上アップや問題解決策」を提案することで、仕事を得る動線が素晴らしい。
特に印象に残ったエピソードは、市役所の印刷物に入札しても、余分なコストのない印刷業者に競り勝つことはできないが、著者は市役所に足しげく通ったことである。
やがて、入札に関係ない職員から、印刷物のデザインに関する相談にのったことで仕事の受注が始まり、横目で見ていた、他の部署の依頼や観光協会の仕事まで引き受けることになった。
著者は顧客が見落としている改善点を炙り出し、是正する提案がとっても上手い。
利用者の目線で物事を考え、改善点を見つける能力は、1人社長だけでなく、全てのビジネスパーソンに必要なスキルであり、AIが進化しても必要とされる能力である。
社会人として社会に必要とされる人材になるために、身に付けておきたい多面的な視点を養うのに役立つ一冊である。
作 者：小宮 絵美
発売日：2024年4月20日
メディア： 日本実業出版社
