最近評者はランニング中毒のようになっている。2日か3日に一度数キロ走らずにはいられない。体のため休めているが、本当は毎日走りたい。これは出場予定の大会間近だからというのもあるが、なんでこうなるのかちょっと疑問である。しかもマラソン初心者で、一年前には全く走ったこともなかった私が。
そんな私がベストセラー「スマホ脳」よりも本国スウェーデンで読まれたという本書を読んだ。運動することが脳にいい、という趣旨の本だが、「では効果的な運動脳の作り方とは?」「なぜ私は走らずにいられないのか?」と精神科医の著者、アンディス・ハンセン氏に聞くイメージで本書を読んでみた。
まず運動がいかに脳によいのか、について徹底的な書き込みである。ストレスで縮小する「海馬」や極度の心配性の人はその各部位が小さくなるという「前頭葉」、これらを運動が活性化するという。記憶をつかさどる海馬、感情が暴走しないように、理性を失わないように働く前頭葉。運動でその両方が活性化し、老廃物がしっかり取り除かれるというという。つまりストレス耐性が強くなるのだ。そのためには「長時間1回より短時間数回の運動」がいいそうだ。
また、ストレスにより増えてしまう物質「コルチゾール」の血中濃度を低下させるにも運動が関与するという。運動は心拍数を上げるため、日常の不安やパニックの「予行演習」を脳にさせることになるそうだ。効果的なのは週2回以上の有酸素運動。ウオーキングよりランニングのほうがより心拍数があがるので、このような予行演習効果も高いとのことだ。
そして、運動は「ドーパミン」を増やす。カフェでも集中すると雑音が聞こえなくなるように、集中力を増すのがドーパミンだ。運動による負荷を多くすればするほど、つまり長時間の運動をするほど、脳のドーパミンは増える。ただし、この運動の効果はすぐ現れるのではなく、数か月かかるとのことだ。
つまりは、「効果的な運動脳を作るには?」の答え、運動でストレス耐性をつけるためには、短時間ただし30分以上の有酸素運動を週2回以上続けることだと読み取れる。
これだけでも素晴らしいが、2個目の質問「なぜ私は走らずにはいられないのか」にも答えがあった。それはどうも、45分以上の有酸素運動はエンドルフィンなどが出てきていわゆるランナーズハイの状態になり幸福感が増すから、と読み込める。しかもこれは古代長距離の狩猟のため、多少捻挫などしても痛みに鈍感になるよう、人間に備わった機能だろうとのことだ。
皆さんも自分なりの質問をもってこの本を読みこなして欲しい。例えば「老化を防ぐには」「IQを高めるには」答えは本書にある。きっと今日よりよい明日が見えてくる筈だ。
■著者 アンディシュ・ハンセン
■発行日 2022年9月10日
■発行所 ㈱サンマーク出版