ドイツの経済学者カール・マルクスの著書「資本論」。この経済古典を池上彰氏が講義形式で解説している。
資本論を読んで、難解と感じた人は少なくないだろう。それはマルクスの理論が複雑だからなのか。実はそうではない。資本論は現代を生きる我々にしたら、ごく当たり前の事を言っているに過ぎないのだ。
では、何故資本論が難解なものと思われているのか。一つ例を挙げてみよう。
「使用価値または財は、抽象的に人間的な労働がその中に対象化されている、あるいは受肉しているからこそ価値を持つ。」※
さっぱり分からん。受肉ってなんやねん。皆そう思ったに違いない。理論以前にそもそもの表現が分かり辛い。こんな文章を永遠と読まされるので難解な印象を受けてしまうのだ。マルクスが悪い。
この文章に池上彰のフィルターを通すと下記の表現となる。
「商品や財産は、人間の労働という尊いものが内包されているからこそ、その価値を持つ。」
これなら誰でも理解出来るだろう。本書はこの様にひとつひとつの文章を分かりやすい言葉に置き換えてくれている。まさに池上彰の真骨頂だ。
因みに「受肉」とは神の子イエス・キリストが人間の肉体を持った事を言う。ここで「受肉」という表現を使うことで、キリスト教社会の人々に労働が如何に尊いものなのかを印象付けでいるのだ。
資本論は聖書的な表現が多数出てくるため、旧約聖書や新約聖書を読み込まなくては理解が出来ない。それも悪くはないだろうが、時間がかかり過ぎる。資本論で挫折した人は、まず本書を読んでみてはいかがだろうか。
※karl Marx (1867). Capital.Critique of Political Economy. (カール・マルクス 今村仁司 (訳) (2005). マルクス・コレクションIV『資本論 第一巻』(上) 筑摩書房)