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【書評】大文豪が完膚なきまでに否定した名作『リア王』

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 複数の話を絡めてストーリーを展開するのがシェイクスピア作品の特徴の一つある。「リア王」でもケルトの伝承を原文とし、リア王を軸とする主流と、グロスター伯を軸とする傍流の二つが平行してストーリーが展開する。

 日本ではシェイクスピア作品といえば「ハムレット」を思い浮かべる人が多いと思うが、欧米では「リア王」こそナンバーワンという見方も多い。各々の人間関係に載せ、権威と真実との葛藤を問う。ストーリーには影響を与えないが道化の存在もユニーク。なにより歴史的にも長くそして広く評価が定着しているのも事実である。

 数々の名作を生み出し評価されてきたシェイクスピア。それだけに平凡な者がネガティブな意見を述べても天邪鬼にしか見られない。
 では、偉大な文豪の発言であったらどうだろうか。トルストイシェイクスピアを批判している。「トルストイ」。名前くらいは聞いたことがあるだろう。19世紀の大文豪だ。私が「シェイクスピアはつまらん」と言ったところで「あっそう」で終わりだが、「トルストイシェイクスピア嫌いだって」と聞けばシェイクスピアへの評価も揺らぐかもしれない。
 若干唐突にトルストイを登場させてしまったが、彼はシェイクスピア批判の例証として「リア王」を採り上げている。要するにそれだけ「リア王」に対する世間の評価が高かったと言えるのだ。

 先にも述べたが複数のストーリーを絡めてストーリーを展開するのがシェイクスピア作品の特徴の一つだ。だが、この「リア王」は軸となるエピソードの二つだけが扱われおり、シェイクスピアの作品としてはわかりやすいもののようだ。シェイクスピア作品の入口としては「ハムレット」より断然お勧めできる。

 ただ、悲劇だから当然と言えば当然なのだが、ハッピーエンドに慣れているとやはりショッキング。原話はもう少しハッピーらしいのだが、悲劇で終わらせてしまうところこそが、やはりシェイクスピアなのだろうか。

 

リア王 (新潮文庫)

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