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【書評】失敗作にみるシェイクスピアの真骨頂『ハムレット』

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 言わずと知れたシェイクスピアの傑作。彼の作品の中で最も長いものとされている。
 モデルは12世紀の歴史家サクソ・グラマティクスによって書かれた「デンマーク人の事績」に登場する「アムレート」。実在した人物であるかどうかは定かではない。

 シェイクスピア劇は「性格の悲劇」と評されることがある。運命や悲運ゆえに起きた悲劇ではなく、登場人物の性格こそが大きな悲劇の要因となっているのだ。
 ハムレットはその代表的な一例といえる。

 このハムレットという作品、実は失敗作だ、という見方もある。先に紹介した「デンマーク人の事績」を素材としているため、シェイクスピアの表現とは思えない記述であったり、本筋と関係のないエピソードが混ざり込んだりしているためだ。
 では、何故シェイクスピア作品の中で最も知られたものになったのだろうか。
 それは、主人公ハムレットのキャラクターによるものだろう。「アムレート」によるただの復讐談に過ぎない「デンマーク人の事績」に対し、ハムレットの複雑な性格はあまりにも強烈である。    
 このような登場人物の性格造型こそシェイクスピアの真骨頂と言えるだろう。

 シェイクスピア作品をまず読むならハムレット!という人も多いと思うが、長い作品であり、さらに唐突な表現があったりして少々読みずらい。読了するには骨が折れるだろう。
 シェイクスピアらしさをみるのであれば、作品全体というより、主人公ハムレットにフォーカスして読んでみても面白い。

 シェイクスピア作品に限らず、どの物語もあらすじ自体はもちろん重要だが、結局人々が共感するのは登場人物のキャラクターそのものなのだろう。

 

ハムレット (新潮文庫)

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