十一世紀のスコットランド王マクベスがモデル。シェイクスピア四大悲劇のひとつであり、そのなかでも最後に書かれたものとされている。
シェイクスピアはイングランドのストラトフォードで生まれた。そのイングランドの王家の血筋はマクベスと対立したダンカンやマルカムの流れを汲んでいる。そのためだろうか作中のマクベスは主人公でありながら悪人として描かれている。だが、実際には当時のルールに沿って善政を行なっていたとう説が有力であり、マクベスが気の毒だという見方もあるようだ。またマクベス劇では時折祟りがあるため事前にお祈りを済ませてから上演することもあるとか…
この「マクベス」は他のシェイクスピア作品と比べ、些か風土の気配を感じることができる。魔女達が乱舞するシーンはスコットランドの国花であるアザミの荒野、悲劇の舞台は濃い霧の中から浮かび上がる古城。このような背景の表現は他の四大悲劇にはない。作中のスコットランドの風景はイングランドで暮らしていたシェイクスピアが実際に見たものなのかもしれない。
本作は比較的あらすじが短く、また単純明快でわかりやすい。そう言った意味でシェイクスピア作品をはじめて読む人、また他のシェイクスピア作品を読んでみても分かりづらいと感じた人にはお勧めだ。
シェイクスピアが描く美しきスコットランド。その美しさこそ悲劇の舞台に相応しい…