本書は、食育日本料理家として活動を行う著者により、1000年以上続く日本の食文化や日本料理にあるその意味や、楽しみ方について紹介している。
著者の活動の中でも、フランスで行う日本料理のマナー教室や実演は、毎回大盛況で、フランス人の日本料理に対しての関心は、とても高いそうだ。
「いただきます」や「ごちそうさま」を言う理由。なぜ「お刺身」や「お造り」と言うのか。飾りの「菊」は食べるのか。食べるときに持っていいのはどの器か等、鋭い質問が多いと言う。
しかし日本では、そのような質問をする人はあまりいなく、健康で長生きできるようにと伝えられてきた日本の食文化が途絶えるのではと、危機感を覚え、まずは、日本人にこそ伝えるべきだと思ったそうだ。
例えば日本を代表する発酵調味料である味噌は、古代では薬としても使われ、身体にとても良いが、まだ科学的に解明されていない部分も多い。なんと著者は、毎日味噌汁を飲むことにより、ダイエットに成功したそうだ。
評者もお味噌汁は大好きで、味噌専門店で様々な種類の味噌を手にいれ、色々な味をほぼ毎日楽しんでいる。飲めなかった日は、日中に「お味噌汁飲みたい」と思い浮かんでしまうほど、身体が自然と欲する欠かせないものだ。
また日本料理は、見た目の美しさも重要視している。空間の美しさを大切にした盛り付けは、世界からも高く評価され、それはまさに芸術作品だ。
著者は、日本料理の修業中に、その美的センスを磨くために、茶道、華道、書道を学んだそうだ。評者の通っていた華道教室にも、著者のような考えを持った人が多かった。
日本料理店を営む人、有名企業の社長、お坊さんなど、空間の美の演出を日常に取り入れるために、国内外から大勢学びに来ていた。
このように、日本の食文化は、様々なものと繋がっている。一人でも多くの人が本書の内容を学び、また伝えていくことが、日本の食文化の継続になるのだろう。