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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】世界で評価されるのは、独自性『~世界96ヵ国をまわった元外交官が教える~外国人にささる日本史12のツボ』

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世界96ヵ国をまわった著者が、元外交官という経験から、外国人の視点に立った興味深い日本の歴史や文化について12のテーマに分けて紹介している。

そのテーマとは「無駄を省いた禅の思想」「飛脚を使った物流システム」「ハイレベルな江戸の庶民教育」「サスティナブルな暮らし」など、幅広いジャンルでとても楽しめる。

本書評では、評者が特に興味を持ったテーマ「世界から評価される日本の芸術」について取りあげる。

日本人からみた世界の芸術、美術といえば「西洋」をまず思い浮かべるが、西洋美術に代表される芸術家たちにとっては、日本美術が大きな影響を与えていた。

その代表的なものが江戸時代に登場した新たな絵画様式「Ukiyo-e」である。著者によると「浮世絵」は日本よりも海外のほうがずっと評価されている印象があるそうだ。

なぜなら海外では、日本美術をあまり知らない人でも、「Hokusai」という名前は誰でも知っており、世界で最も有名な日本人の一人だと著者は言う。また、米国雑誌『LIFE』でも「この1000年で最も偉大な業績を残した100人」に日本人で唯一選ばれている。

西洋では絵画は「リアリズム」が当然とされていたその時代、画家たちはその絶対ルールに縛られていた。そのため、ルールから外れた作風を貫こうとしていた印象派の画家たちは酷評され続け、画家としての道も危ぶまれていた。

しかし浮世絵の登場により、それに影響を受けていたゴッホ氏やモネ氏など印象派の作品の評価は完全に覆ることとなった。

浮世絵は、実際とは異なる形、鮮やかな色彩、左右非対称、自然を描く独自性が、西洋画が最先端だと疑わなかった人々に対して大きな衝撃を与えた。

また、パリ万博では、鎖国時代から開国した日本が出展した着物や美術品にも世界の人々が心を奪われたことは言うまでもない。鎖国の時代でも日本人は、様々な分野で独自性を貫くことができたのだ。そして現代では「Ukiyo-e」と共に「Emoji」が世界中で愛される日本文化の一つとなっている。

世界中が急激に一変された現在。その不安から正義を振りかざして人を攻撃し、自分の未熟さを正当化する人、在らぬ不安やルールに押し潰されていく人、また世界がどういう状況であろうと独自性を貫き、新たな境地を切り開いていく人、何れもそれぞれの人生。どれを選択するかは、自分次第。

このような激動の変化が、その人の本当の姿を表す。それは、歴史が教えてくれる。本書は、そう思わせてくれる一冊である。