ちょっとぼんやりで内気なメガネっ子の今日子、関西弁丸出しでややふくよかな留利子、くわえタバコにクールな物言いの麻美。
美大の油絵科に通う女子三人。現在二十歳の同級生で、ボロアパートで同居中。いずれも男っ気無し。
芸術に真剣に向かいつつ、たまに彼女たちなりの”いい男”に気持ちを揺さぶられては玉砕したり、男を見る目の無さに落ち込んだり。
今ひとつ流行りや廃りには乗れない、内気でガンコな三人組のケナゲにも思える日常の物語。
狩撫麻礼の作品で、女子たちが主役とは珍しい。しかし、女子たちとはいえやはり狩撫節は炸裂する。
「美大の男なんて、どうせ才能のある奴ほど広告関係に進んで、資本制社会の先兵になるか、画商や評論家とつるんで、画家とは名ばかりの男芸者になるかのどっちかじゃないか」
「親兄弟ちゅうのは世間の最前線やで。そんなもんと仲よくやっていける芸術なんか信用できへんよ。あまりにも過激にリアリティを求めたら、当然世間のツマハジキになってゆくもんや。美術史の天才たちを思い起こしてみィ!!」
「こんな世の中がいつまでも続くと思ってる馬鹿ほど明るいもんな。洗脳されてるのも気付かないでさ」
ちょっとした出会いの数々に何かを感じ、少しずつ学んでいく三人の姿は、コメディでもあり、センチメンタルでもある。
「何度生まれ変わっても、いい思いなんか出来っこない気がしてきたよ」
WAILERS〜嘆き悲しむ者たち。
それでも彼女たちは、決して易きには流れない。
およそ人の道に到達点はなし。ただ、そこに至るプロセスがあるのみ。無垢と情熱と意志を武器に、淑女への長き階段をワンステップ。
淑女たち -WAILERS-
作者: 狩撫麻礼、中村真理子
発売日:1985年3月15日
メディア:単行本