自著の三冊目である。著者が長崎ハウステンボスの社長に就任し、再生に着手したのが2010年春。そして2011年9月期には営業黒字化を果たした。開業以来始めての黒字だ。
著者は、80年代には孫正義氏、南部靖之氏と共に、ベンチャー三銃士と称されたこともあったが、虚栄心はそこそこ、天邪鬼な性格もあってかメディアなどへの露出を積極的にする方でもなく、誰もが知っている著名人という訳ではないし、ビジネスパーソンであっても知らない人は知らない。
(昼休みに会社の近くで一人で歩いているところに出くわし、コンビニに昼食を買いにいくと言うのに驚いて、「有名人がこんなところを歩いてて良いんですか!?」と尋ねたら、「どこが有名人なのー」と笑い返されて、さらに驚いたこともあった。
また、メディア出演の情報が社内にすら一切共有されることも無いため、テレビを点けるといきなりそこに映っていたりして、「ひょえー」となることもしばしば。)
しかし、誰もが失敗すると考えていた案件であったにも拘らず、ハウステンボスの再生に成功したことで、世間の注目が集まった、久々の出版の依頼が来るのにもうなずける時期だったのだ。
前作、前々作と読み比べると、旅行会社エイチ・アイ・エスの代表という立場は一貫しているにも拘らず、企業規模の増大に従って取り上げている項目にも変化があり、人も企業も環境によって移ろうものなのだということが分かる。
本書では、ハウステンボス再生に関し、その経緯から始まり、その後の様々な取組みについても具体的に詳述している。
また、学生時代からこれまでの歩みと、それらの中で得てきたビジネス哲学なども綴られているが、強く訴えているのは、失敗を恐れてチャレンジをしないことへの戒めだ。その為、成功の陰でこれまでどんな失敗をして来たのかについても語り、「チャレンジしない限り、新しいものは出来ない。そして、時代が激しく変化していく以上、チャレンジしない者は滅んでいくしかない」と説く。
なお、本書の題名であるが、その意味は「上手くやって運をつかもう」というものではない。成功するために大事な要素である運を味方につけるには、それなりの条件が必要だと言うことだ。
著者が掲げるところのそれは、分かり易くシンプルなものである。だが、シンプルだからと言って、簡単に誰でも出来るかどうかはまた別のことなのだ。