京セラグループと言えば、電気通信事業の自由化を受けて1984年に第二電電を創業したのを皮切りに、様々なジャンルの事業に手を拡げ、今や一大企業集団となっているが、その始まりは、上司との意見対立から職を辞し、「稲盛和夫の技術を世に問う場」として創業したセラミック工場であった。
しかしその後、労使トラブルをきっかけとして著者は当初の目的を捨て去り、京セラの経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めることとした。
町工場からいかにして巨大企業となり得たのか。その理由を著者は、「企業哲学があり、それを全社員と共有できているから」と答える。
新しい会社を起こす際にも、M&Aで異なる文化と接した時でも、「哲学」、簡単に言えば「考え方」を伝え、共有するのだと言う。
本書にしても、米国企業を買収する際に、国民性を乗り越えて共生をするために、数日間の勉強会を行った際の資料として使った『心を高める、経営を伸ばす』と言う既存の著書が元となっている。
起業当初の著者は、技術的に難しい仕事を受注してきては、無理だという従業員を説得し、工夫を凝らし知恵を絞って、なんとか製品を完成させて顧客獲得を重ねた。
ポッと出の町工場には、他社ができない様な仕事を「できる!」と言い切り、やり切るしか新規開拓の道はない。
著者は、その頃から「自己の能力を未来進行形で捉えよ」と従業員に言い聞かせた。何としても夢を実現させようと強く思い、真摯な努力を続けるならば、能力は必ず向上し、道はひらける。
「人生の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力」である、と。
そして、事業を成功させ続けるためには、心を高め、徳のある人格を築き上げていくことと、高い目標を立て、毎日を全力で生きる。現状に甘んじることなく自分の限界にチャレンジし続ける精神的な強さと意志の力を養うことと説く。
これらのことを長年実践してきた結果が、現在の京セラグループを形付けることとなったのであろう。
そして、最後を締める言葉はこれだ。
「決してあきらめない」