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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】困難にぶつかっても、見方や考え方を変え、禍転じて福となす。『物の見方、考え方』

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経営の神様である。著者についての説明は蛇足としかなるまい。
著者の金言は数多い。そのためテーマを絞って改めて編纂し直した書籍も多く出版されているが、本書は著者の連載寄稿を元にしたものであり、長年の会社経営に携わった折々の経験を振り返りながら、学び得た経営哲学を披露している。著者に関する書籍は何冊か読了したが、その中で最も著者を身近に感じ得た書籍である。
その言葉は、意外にも当然といえば当然なことが多い。しかし、その当たり前のことを貫徹することが難しい。何故ならば人間は困難を目の当たりにすると忘我の境に囚われてしまうからだ。

「困難に遭遇した時に私はあまり悲観もせず、その境遇に素直に従ってきたというような感じがするのである。自分はこういう立場に立っているのだから、これ以上何も考える必要はないのではないか。きょう一日を充実してやったらそれでいいのだ、という考え方が無意識のうちにあったような気がする。したがって、そういう場合にも一つもうろたえずにやっていけたのだと思う。」
と著者は言う。
また、仕事に関する心構えについてこの様に述べている。
「社会とともに発展するのだ、あるいは世の中のためになるのだ、という考え方を持つことである。そして自分は社会を発展させる一人の選手である。苦労と考えられたものが、働く喜びに変わってきた。つらいことが、うれしい尊いことに変わってきた。したがってむつかしい仕事にぶつかるたびに新しい勇気がわき出て、事業に体当たりしていったように思う。」

松下電器は、高度成長期のモノ不足の流れを上手く掴んだからこそ成長出来たのだ、という時代背景は確かにあったのだと思う。しかし、同じ時代を生きたにも拘らず、滅してしまった会社もまた多い。
「人間の一生を予言するとこはできない。知ろうとしてもわからないことである。しかしわからない範囲においても、こうだという信念をもって、自分自身の道を力強く歩くことを考えねばならない。したがって大きな成功をおさめても、有頂天にならないし、たとえ失敗してもおどろかない。淡々として大道を行くがごとく、処世の道を歩んだところに、希望にかがやく人生が開けると思う。」
時代によって経営環境に変化が生じようとも、経営者として備えるべき資質については差異は大して無い。景気の浮き沈みに負けることなく生き残ってきた経営者の共通項とは、「熱意を持って」「自らの運を疑わず」「決して諦めることなく」「謙虚さを忘れない」ことではないだろうか。

 

物の見方 考え方 (PHP文庫 マ 5-3)

物の見方 考え方 (PHP文庫 マ 5-3)