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【書評】近代国家の礎を築いた男の経営哲学。『現代語訳 論語と算盤』

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渋沢栄一は、江戸時代の幕臣、明治時代の大蔵官僚を経て、退官後は実業家に転じた。第一国立銀行理化学研究所東京証券取引所などを始めとし、生涯で約480もの企業の設立や経営に関わったと言われている。

氏の代表的な著書が「論語と算盤」であるが、本書はその現代語訳版である。一冊を通して「利潤と道徳を調和させる」という、経済人としての心構えを説いている。
孔子論語というと、偽善的で金儲けなどには否定的なものだと解している方が多い様であるが、それは違う。利潤を追い求めるだけの経営者であってはならない、と言うだけのことだ。
氏が本書の中で述べているのも、「仁義を根本にして商工業を営めば、あえて争うがごとき事をせずとも、利は自ら懐にはいってくるものである」ということであり、続けて「仁は人を思いやり、慈しむ心。義は人として守り、進むべき道」と言う。
利潤を求めるだけでは大成はしないが、仁義をもってこれに当たれば、両者は相反せず、一体と為すということだ。

また、「本分」や「信念」というものについても語る。
「本分とは、与えられた社会の中での役割である。逆境に立たされた時には、自分の本分であると覚悟をすることだ」
「信念が強ければ道徳は必要ない」

そして、「成功や失敗とは、心をこめて努力した人の身体に残るカス」だと言う。だから、「一日を新たな気持ちで」生きようと論じるのだ。

渋沢栄一は、2024年からは新一万円札の顔となる予定だ。
現代語訳で読み易くなっているので、その前には一度お手にしていただきたい一冊である。

 

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

  • 作者:渋沢 栄一
  • 発売日: 2010/02/08
  • メディア: 新書