本当においしいものは言葉を探す必要もなく、喉を通過したときにはもう感嘆の声が出て、そして胃におさまるころには、花がひらくみたいに言葉が湧き起こってくる。
ひょんなことからサンドイッチ屋さんで働くことになった僕。それからは水曜日を除いて毎日のように耳を切り落としている。
スパッといさぎよく切れていること。それでいて、無機質な印象にならないこと。それがおいしいサンドイッチの口あたりになる。食べる方は最初が肝心だから、そうなると、つくる方は最後が肝心になる。
のんびり屋の僕は、どこか時代の流れにうまくのれずにいる。それでも古い映画館が好きだったり、美味しいサンドイッチに出会えたり、好きな人がいたり、大切にしていることはちゃんとある。
周りからすると、勝手に遠回りして、迷子になってるように見えるのかもしれない。だけど、迷子になったぶん、余計にいろんなものが見れたりもする。
そこで出会う楽しいものは、いずれも「遠回り」の途中にしか存在しない。もしかすると、不安さえなければ迷子って案外楽しいのかもしれない。
変化することとか、挑戦することの大切さっていうのはよく分かるんだけど、評者は昔からほのぼのした日常みたいなものがとてもとても好きだ。
毎日同じことの繰り返しのようだけど、本当は少しずつ変化していて。よく見るとその中にはちょっとした挑戦もあったり。
ただ、そのささいな変化っていうのは見過ごしてしまいがちですよね。だからこそ、小さな気づきを大切にしていきたいです。子供の頃みたいに。