「知名度が上がればブランドになる」と考えている方が世の中には多くいます。ですが、それは間違いです。ブランディングとは、”知らせる”という狭義のものではなく、企業の柱を”見つけ、育て、強くする”その一連の過程を指すものだからです。
時代は「規模の経済」から、「品質の経済」へと変化しました。そしてインターネットは、私たちが購入したいと思えるニッチなプロダクトを「知る機会」そのものを、爆発的に増やしました。品質でユーザーの心を掴めば、中小企業のプロダクトが選ばれる時代になっているのです。
ユーザーに選ばれるためには「柱を確立する」ブランディングが必要不可欠です。一本筋の通った柱を持つことが、どこにもないプロダクトを生むことにつながります。目指すべきは競合他社にないものを伸ばし追い越す差別化です。
そしてブランディングにおいて、重要となるのがデザインだと著者は言います。ここで言うデザインとは、単に見た目だけのことではありません。
アートが社会に対する問題提起である一方、デザインは社会の問題解決だと言われています。企業の価値・本質を正確にまとめ、社会にわかりやすく伝える。これはすべてデザインの担う領域です。
1999年、アップルがiMacの5色のカラーバリエーションを発表しました。当時、スティーブ・ジョブズは、これからパソコンを購入しようとする人に対する最も重要な質問のひとつが「あなたのお気に入りの色は何ですか?」だと述べています。これは自らの本質やビジョンをユーザーに提示し、問いかける行動です。
評者も現在、iphoneを使っています。なぜAndroidではなくiPhoneを選んだのかを考えてみると、機能面だけではなく、これを使って得られるワクワク感、体験を重視したからなのかもしれません。そしてこれはアップルというブランドを信頼しての行動です。
ブランドを築き上げていくことはつまり、社会との信頼関係を作っていくことなのだと思います。そのためにはしっかりと柱を明確にすること、そしてそれを自身が信じて、継続することが必要です。これは企業だけでなく、一人の人間としても言えることです。
ブランディングを無意味だと感じる方にこそ読んでいただきたい本です。