圧倒的な結果を出し続けている会社やチームの陰には、「これがやりたい!」という強い想いを持った人たちがいる、と著者は主張します。そして、その想いを「単なる妄想」で終わらせないためには、「直感」を「論理」につなぎ、「妄想」を「戦略」に落とし込むことが重要であると説きます。本書では、そのための思考法であるビジョン思考について学ぶことができます。
普通に生きていると「自分がどう感じるか(自分モード)」よりも、「どうすれば他人が満足するか(他人モード)」で考えてしまいます。ビジョン思考により圧倒的な成果を出すための大前提として、“今ココ”にいる自分へ注意を引き戻すことが重要であり、本書ではそのための具体的なアドバイスを提示します。
ビジョン思考の具体的なメソッドは、妄想→知覚→組替→表現のサイクルからなります。PDCAサイクルをベースとした「カイゼン思考」とは異なり、論理から始めない点が新しく、評者は読み始めた当初、理解が追い付きませんでした。しかしながら、各フェーズにおけるポイントや具体的な手法が多数掲載されており、読み進めるうちに理解が進みました。
評者は製造業の技術者であり、PDCAサイクルをベースとした「カイゼン思考」で日々の業務改善をしてきました。しかしながら、高度IT化や働き方改革など、外部環境が大きく変化する中で、従来の「カイゼン思考」による直線的な成長だけでは対応しきれない状況も発生していると実感しております。それに対し、個人の中から湧き出る「妄想(ビジョン)」を駆動力にし、ビジョン思考によりトライ&エラーを高速で回すという戦略は今の時代に対応するために非常に有効な思考法だと思います。
成功するプロジェクトには「自分モード」で「妄想」を持った人がいます。そして、その妄想を「単なる妄想」から「価値あるアイデア」へ昇華させる思考法を本書は与えてくれます。個人や組織において圧倒的な結果を出し続ける思考法を学べる一冊です。