芥川賞ノミネート作品。
平成くんから「安楽死を考えている」と告げられた恋人の愛ちゃんの視点で本書は書かれている。
平成(ひとなり)くんは平成のはじまりに生まれ、「平成くん」と呼ばれることで平成の時代を象徴する人物のようにメディアに取り上げられる。人は自分の人生の終わりまで決められるような時代になってくるのかなと考えさせられるが、でも決して死を安易に考えてはいけないと忠告されているようにも思える。愛ちゃんと平成くんが安楽死の現場を取材に行ったところでは、「うわぁ〜」思う場面もあります。
平成が終わることで自分は終わってしまうから安楽死。という考えは果たして正解なのか。
合理的で性的接触を嫌う平成くん。
愛ちゃんは平成くんの思いを知ることで理解していき、平成くんは愛ちゃんの思いを理解していくことで決断していく。便利機能がある世の中、平成くんは自分の中にあるものを言葉で愛ちゃんに伝えていく。愛ちゃんはその思いをちゃんと受け止める。
平成くんをよくわかっている愛ちゃんの気持ちになるとなんとも言えない気持ちになる。「ねぇ、グーグル」と話しかけるように「ねぇ、平成くん」と平成くんに話しかける愛ちゃんが度々でてくる。2人のやりとりが愛らしく、その分最後は涙が止まりません。
本書の中には、グーグルホームや、UBERなどの便利機能が出てきたり、ZOZOTOWNの前澤社長などの有名人がでてきたり、近年話題になったニュースがでてきたりと、人の生活がぐっと変わった平成という時代を強調しているように思えました。
平成が終わるからといってなにもかもが終わるわけじゃなくて、むしろ続いていくとおもいますが、自分の人生の終わりを考えると、まだそこまでいってなくて、今を精一杯生きようと思えました。
- 作者: 古市憲寿
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/11/09
- メディア: 単行本
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