本書の主旨は読解力が無いもしくは必要ない仕事であれば、そう遠くない将来にAIに代替されてしまうというものだ。
皆さんは東ロボくんをご存知だろうか。東ロボくんとは2011年に始まった“ロボットは東大に入れるか”というプロジェクトの愛称だ。著者はこのプロジェクトにおいて、プロジェクトディレクターを務めていた。
結論から言えばこのプロジェクトによってAIが東大に合格することは叶わなかった。しかし議論すべきことはそこではない、AIはMARCHの学部に合格できるまでに至ったのだ。
AIは計算に変換できない処理をすることは難しい。人に得手不得手があるようにAIは“読解”が苦手なのだ。にも関わらず上記の大学群に合格することができた。東大には入れずとも、およそMARCH以下の大学、日本全体の80%の大学には読解力が無くても合格できてしまうのだ。
本書では現在の教育を危惧している。一部の大学は読解力によってスクリーニングはできても、教育によって読解力それ自体を科学的に高めることはできていないのだ。読解力が必要無い仕事からAIに代替されていく。その分空いた時間で好きな仕事をすればよいのだが、おそらく代替された全員ができるわけではない。雇う側の人手不足と雇われる側の読解力不足という、雇用のアンマッチによって経済が衰退していくという主張だ。
本書は研究者の視点で実証結果という根拠を元に語られている。技術が発展する未来に漠然と不安を感じる人は、まずは本書を手に取ることから始めてみてはどうだろうか。