オルゴール店に置いてあるオルゴールが一斉に鳴り出したらたぶんうるさい。そのくらい人の心に流れる曲が聞こえすぎてしまう。そんなオルゴール店の店主が1人1人の心の音楽を聞き、オルゴールを作る7つの短編集。
一話目の「よりみち」はいきなり涙必須の物語になっています。耳が聞こえない子どもをもつ母の思いや葛藤に涙。オルゴールができた時、曲を聞いて子どもの思いを知る母。
二話、三話……と、店主の非現実的な特殊な能力に疑問を持ちつつも、色々なひとの人生や思いが現実的なものばかりで夢中になって読み進めてしまいます。
1話目から少し出てくる、オルゴール店にコーヒーを運んでくれるむかえの喫茶店の女性が気になります。6話目の「おむかい」では店主の謎や、喫茶店の女性の事、タイトルの「ありえないほどうるさい」の意味が想像できるように…
7話目の「おさきに」で、主人公の話はもちろん、最後の最後に店主と喫茶店の女性にも触れ、ダブルの涙が…
オルゴールから流れてきた曲によってこの人たちが新たな一歩を踏み出すのだろうと思うと幸せな気持ちになりました。
本書の舞台は北海道の小樽。著者は小樽にも取材に行っていたようで、小樽の街の雰囲気や人の生活などがよく伝わる内容も所々書かれている。
著者は、本書もそうだが絶対的な不幸みたいなものは、あまり書きたいと思ったことがない、せっかく物語を作るからには、ひと筋でもいいから光がほしいと語っている。心が疲れている時や不思議な世界観を覗いてみたい時に本書はオススメだが、他の作品もぜひ読んでみたい。
私の心に流れる曲はなんなんだろう。印象的だった音楽はすぐ思い出すけど、実は気づかなかった記憶を呼び起こす音楽が心の中にあるかもしれません。過去は振り返らない私ですが、このオルゴール店の店主には私に流れる曲を聞いてもらいたいなと思ってしまいました。
- 作者: 瀧羽麻子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/05/10
- メディア: 単行本
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