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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】経営者の基本の条件は熱意。『経営秘伝―ある経営者から聞いた言葉』

 

書名に書かれている「ある経営者」というのは、経営の神様と呼ばれる松下幸之助のことを指す。
著者は、22年間に亘って松下氏の側で仕事をしてきた。その間に得てきた松下氏からの教えをしたためたのが本書であるが、松下翁が滔々と述べる話を聞き書きしているという形式を取っており、その舞台は京都にある松下翁所有の静かな日本庭園。
とある春の一日に、庭を眺めながらゆっくりと話を聞かす、という風情だ。
その語り口は、ごく自然な関西弁で、まるで気のいいおじいちゃんから気楽なお話を聞いている様な趣きなのであるが、その言葉はシンプルでありながら深い知見を携えている。

様々な面から語りかけてくる松下翁の言葉を、幾つか抜粋してお届けしたい。
「経営者はいつも将来が頭に無ければならない。なんとしても目標を実現したいと願うならば、なんとか出来るように考える。出来るようにするためには、どうしたらいいのかを考える。そして断固やると。それを解決する知恵を出し、努力をせんといかん」

「運命が90%、だからといって努力せんでいいと言う訳ではない。そして努力したから必ず成功すると考えてもあかん。しかし成功するためには10%の努力が必要なんや」

「本当の知恵は汗のなかから生まれてくる。汗を流し、涙を流し、努力に努力を重ねるうちに、ほんまものの知恵というものが湧いてくる。身についてくる。たとえ最初から知恵のある人でも、その知恵を社会の波で揉んだほうがいい」

「これからの経営者に求められるのは、時代の流れ、そしてその先を読めるかどうか。できるだけ気分を上の方に持って行って、そこから時代の友人を見つめる。素直な心で上から眺める気分でいるとよう分かる」

「卑屈にならない。素直」

と、経営の厳しさと妙味を味わうにはもってこいの書である。
実は、私が初めて松下幸之助関連の書籍を読んだのがこの本である。
手にした理由は、上場会社の社長である一人の先輩経営者に薦められたからだ。その経営者は松下政経塾の二期生であった。つまり生前の松下氏の薫陶を直に得た人物である。
ちょっと羨ましく思う。
そして、その先輩経営者が本書を薦める訳も、読んでみれば貴方もきっと理解できるに違いない。


経営秘伝―ある経営者から聞いた言葉
作者:江口克彦
発売日:1992年12月1日
メディア:文庫本