本書はホームレスへのインタビューを元にされている。この“ホームレス”という表現は実は正しくない、なぜなら彼らは住む家を持っているのだ。彼らの家はどのように作られたのか、それは他の誰でもなく、そこに住む彼ら自らが作っている。
骨組みはどうするのか、屋根は、床はどこから調達するのか。答えは、全て街の中からだ。釘や工具でさえ街の中から探すことが可能だ。それだけではない、著者はインタビューの中で熱々のおでんでもてなされている。生活に必要な家電製品でさえ街から手に入るのだ。
どんなものでも手に入るからといって、決してルール無用という訳ではない。彼らが0円で暮らすには、相手とのコミュニケーションが必要だ。無作為に積まれている廃材であっても、誰かの所有物であることがほとんどだ。相手に対し事前に許可を取った上で、最後にはその場所は現状復帰をする。相手を想いやる姿勢が自身の良い生活を作ることは、住む場所の値段がいくらであっても変わらない。
本書は“こうあるべき”や“こうあるはずだ”という固定観念を整理してくれる。お金を持たないことが必ずしも不自由だと言えないことに気づかされる。同時に、お金をかけて作り上げた生活が、本当に幸せなのだろうかという疑問にも気づく。ライフスタイルに合わせて住む家を作る人たちの生活を知ることで、社会で生きることで大切なことは何かを考えさせられる一冊だ。