最近の若者は仕事に対してやる気があることを見せ、「やりがいのある仕事がしたい」と言葉では語る。しかし、そもそも、「やりがい」というものがどんな概念なのか、若者たちはまだ知らない。知らないのに、言葉だけでそう言って、気に入ってもらおうと振る舞っているだけなのだ。
そして、振る舞っているうちに、自分でも、言葉だけで「そういうものがあるはずだ」と信じ込んでしまう。これが、「仕事のやりがい」という幻想に関して生じる問題の根源である。
そもそも会社は見せかけの「楽しさ」や「やりがい」を作ってしまうから、現場で実態に気づいた若い社員は、「こんなはずじゃなかった」と辞めていく。特に、この頃の若い人は「好きでなければやらなくても良い」という絶対的な信念を持って育てられているから、辞める判断が早い。
さらに、現代の会社においては、トップ周辺の年寄りたちの価値観がまだ支配的な場合が多い。だからどうしても世代間ギャップが生じやすくなり、若者にとって働きにくい状況になっている。
当たり前の話だが、仕事の目的はお金を稼ぐことである。ただ、この社会で生きていくためには、呼吸をするように、やはり「働くしかない」ということである。もう少し別の表現でいうと、生きていくには「働くことが1番簡単な道」なのであり、面倒なこと、疲れること、意味がわからないことを、「しかたがないな」と思ってやると、それなりにお金がもらえる。そういう機会があるということは、非常にありがたいことなのである。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/05/10
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