本書はV字回復を遂げたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下: USJ)の成功に向かった奮闘記だ。冒頭でUSJの低迷に触れられているが、素直に私の頭に疑問符がついた。V字回復前の低迷期に私は大阪に住んでいたが、USJがそのような状況にあるということは全く認識していなかった。USJスタッフによる努力ということもあり得るかもしれないが、エンターテイメント産業は内外ともにマイナスな情報には鈍感になりやすいのかもしれない。
本書の主題は著者が呼んでいる“イノベーション・フレームワーク”という、アイディアの発想法だ。本書ではUSJが危機的状況にありそれを何度も打破する著者のアイディアが記されている。このアイディアを捻り出す技を汎用化させようというのがこのフレームワークだ。著者はアイディアを出す方法は、つまりはアイディアが出る“確率を上げること”としている。これは大きく4つに分けられ、「フレームワーク」「リアプライ」「ストック」「コミットメント」だ。これらを実直に取り組む人だけに確率の神様は微笑んでくれる。
エンターテイメント産業と聞くと、どうしても華々しいイメージが先行する。しかし実際にはトレンドや消費者のマインドの影響を受けやすく、難しい分野だということが本書を通し伝わってくる。楽しいと感じるその裏側ではどのようなことが起こっているのか、ビジネスの観点から見ることも一つの楽しみなのかもしれない。
USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫)
- 作者: 森岡毅
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/04/23
- メディア: 文庫
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