本書は栃木にあるカメラ専門チェーンである“サトーカメラ”の経営理論が詰まっている。サトーカメラは栃木県内のカメラ販売シェアの80%を占め、オープン10年足らずで業界売り上げTOP10にも入ったことがある。これだけ聞けばどのような画期的なアイディアで成功したのだろうかと思うが、やり方は至ってシンプルで“相手をどれだけ想像し、相手のために行動できるか”だ。
私はこの春から社員とのコミュニケーションを密にする立場に配属されたことから、むしろ第4章の人材育成の内容に興味を持った。本章を拝読後私が思ったことは、こちら都合でメンバーの個性を均すことはやめようということだ。
サトーカメラではスタッフ(同店での呼び名はアソシエイト)の“自我”を尊重している。マニュアルにない、目の前のお客さんに喜んでもらうためには、本部では感じ得ないそのスタッフ個人の感覚が大きな価値を持つ。お客さんにおすすめする前にまず自分自身がその商品をどう思っているのか。自分にとっての商品の良さや時には物足りなさを認識することで、いま目の前のお客さんにどう力になれるのかリアルに想像ができる。
本章では“【自我】×【打算】×【調和】”の方程式に合わせてどのようにスタッフ個人の能力を引き出すかが紹介されている。スタッフ育成がひいてはお客さんの喜びに繋がっていく、そんな文脈がみえる取り組みだ。
本書でも他にも中小企業だからこその強みの活かし方が多く語られている。私のように経営者でなくとも、企業の一部署として、チームの一メンバーとして学べることは多いはずだ。手頃なマーケティング本に手を出さず、ぜひ本書を手に取ってほしい。

モノが売れない時代の「繁盛」のつくり方 ―新しいマーケットを生み出す「顧客一体化戦略」― (DOBOOKS)
- 作者: 佐藤勝人
- 出版社/メーカー: 同文舘出版
- 発売日: 2018/03/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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