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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】血塗られた国境線で平和を願う 『ブラッドライン』

本書は章ごとに舞台となる国が異なります。登場人物も移り変わるのですが、彼らを繋ぐのは、一人の“M”という男の死についてです。

また、“M”の死をきっかけに、押さえつけられていた日常を過ごすことに、登場人物らは、疑問を抱き始めます。
彼の死が、登場人物の心の蓋を強引に引き剥がしていくのです。

暴かれていくにつれ、見えてくるものは、彼らが抱えている心の闇。
失った家族愛、歪んだ友情、無気力な人生、打算とプライド。そういった底意地の悪い、人間の悪臭を漂わせながら、彼らは人間の死と戦争と平和に向き合っていきます。

全ては、“M”の死が物語の始まりでした。そして、彼を中心にストーリーは、動き続けていきます。

世界的なスターである“M”は、平和を願う慈愛に満ちたスーパースターでした。死んで良い人間ではなかった。
彼を慕うファンは、彼の死を通して世界の残酷さに向き合おうと、世界に心を開いていきます。
しかし、その結果気が付くのは、自らも戦争に加担している加害者の一人であり、人類は望む望まないにしろ、戦争に参加しているという現実でした。

戦争と平和、そして愛。
愛されていない人間は、からっぽになり、誰かのことを気にかけることができなくなる。
気が付いた人間の涙ぐましい努力も、いつかは枯れて、世界は争うために歯車を巻き戻していく。
戦争を題材に、人間の行なっている残酷さ、そして著者が伝えたい「真っ直ぐな真実」が書き連なる熱く哀しい一冊でした。

 

[音声で聞く]

http://m.himalaya.fm/jp/episode/205469/6458335/2

 

 

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