中ソ戦争が勃発する漫画作品である。
え?ソって何って?ああ、そうか。ソビエト社会主義共和国連邦、つまり・・・ええと、簡単に言えば今のロシアとその仲間たちのことだ。
矢作俊彦の作に、大友克洋の画である。これはもう堪らない。
当時二人は、ネオ・ハードボイルド小説作家と、ニューウエイブ漫画家としての地位を或る程度確立していたどうしだった。この二人がどういう運びかは知らないが、コンビを組んだのだ。
大友漫画は、それまで主流であった劇画調漫画と大きく異なり、強弱を廃した画一的なペンタッチと緻密な書き込み、それに反して大胆な空白を使用した構図を見せてくれたりと、斬新であった。
ドライで残酷でもありながら、すっとぼけてもいる作風も魅力であったが、最大の特徴は、登場人物を美男美女に描くことがなく、普通の平坦な顔をしたキャラクターしか出てこないところであった。もっとも、これは『アキラ』で覆される。
さて、本作は中ソ当事国だけでなく、韓国や、アメリカ、NATO、イスラム圏内などを混ぜこぜながら、紛争勃発までをシリアスに描いた第一話から始まるが、以後は、矢作俊彦と大友克洋が中ソ戦争漫画で一発当てようと奮戦するギャグパート、戦争により多くの日本人が運命を左右される様を描く読み切りのシリアスパート、ハチマキ、ボウイ、めがねの三人組が中国大陸を激しい戦闘をしながら渡り歩くギャグ(?)シリアス(?)パートが、交錯していく全十三話だ。
1980年頃を描いたものなので、そりゃ流石に古いっちゃ古いが、なかなか類を見ない作品ではあり、また、2019年には『漫画アクション』にて、『気分はもう戦争3(だったかも知れない)』が単発で掲載されて話題となったりと、未だに影響力のある作品ではあるので、機会があれば是非。