外食産業においては“働き方改革”という変化を表す言葉は、どこか縁遠いように思っていた。おそらく職人としての価値観が大切にされるからだろうか、変わらないことが良しとされる暗黙の了解もあるだろう。しかし近年では人材確保の難しさやIT化、評価経済へのシフトなど、多くの店が“どのように変化をするのか”が試される。もちろん変わらないことも選択肢の一つかもしれないが、その選択肢を取って成功できる店はごく僅かだろう。
SNSとスマホが外食産業に与えた影響は大きい。インスタグラムやFacebook、Twitterなどを駆使し、全員を発信者に変えた。純粋に美味しい料理を紹介したい人、承認欲求からの投稿など目的は様々だが、無視できない動きになっている。軽んじた結果窮地に立たされている店もあるはずだ。本書でも例えばインスタグラムの有効な活用方法について述べている。食には視覚の美しさという評価項目が確かにある。最もSNSと相性の良い要素である以上、それらの発信者たちに味方になってもらえれば心強いだろう。
麻布十番の天ぷら屋「たきや」の例が紹介されているが、ぜひ検索をしてほしい。天ぷらでそんなインスタ映えなんてと思ったが、こういうことかと納得してしまった。このようなお店にはぜひ行ってみたいと思うし、このようなお店を紹介してくれる友人がいれば確かに感謝をしてしまうだろう。
一生懸命努力した結果苦しい今の状況があるのなら、もしかしたら別の努力が必要なのかもしれない。例えばそれは今回述べたインスタ映えのような観点かもしれないし、コミュニケーションの問題かもしれない。
本書は外食産業に関わる方以外に、努力を続けている方に読んでほしい。努力すべきことは一つでなないということに気づかせてくれる一冊だ。