日本にあるジレンマの多くは、“こうするべき”という圧力と差別によって生み出されていると本書を読むことで改めて気づく。現代は幸せが多様化していることなど認識しているものの、そこに社会の制度は追いついていない。“知っていることとできることは違う”とは教育の機会でよく耳にするが、その典型だろう。
日本の企業で女性が活躍することは難しい。当然活躍する女性はいるが、おそらく量や質そして数の努力は周りの男性と同じではなかったはずだ。例えばリーダーとしてチームをまとめることが“活躍”の一つに挙げられるが、それを推進する厚労省の室長クラス以上の幹部の女性比率でさえ6.5%(5人)だという。私は気づかなかったが、以前掲げていた(気がする)女性管理職3割の目標はこっそり撤回されていたらしい。
女性が活躍しづらい理由の一つは出産後に待っている環境の変化だ。日本の企業に圧倒的な男女格差があることは、女性は実感としてお持ちではないだろうか。日本の企業は社員の評価を例えば残業時間などの忠誠心ではかる。きっとどれだけ首を縦に振ったかも無意識に査定に影響しているのではないだろうか。そのような江戸時代のモノサシが残る中、出産後の女性に与えられる仕事は“マミートラック”だ。働く機会は保証されるが、そこにキャリアアップの観点が入っているとは到底思えない。この状況に気づけない理由は管理職のほとんどが男性だからだろう。
本書は上記の仕事を含め、結婚や子育てなど女性の分岐点を中心にそのジレンマに触れている。当然男性にも共通して当てはまることも多く、パートナーの理解を深める意味でも男女ともに手に取ってほしい。人は“人的資本”、“金融資本”、“社会資本”と大きく3つの資本を持つことができる。その3つの組み合わせから人生は8のパターンいずれかに分類される。あなたはどのパターンに属するのか、そのリスクは何なのか、まずはそこをきっかけに本書を読み進めてみてはいかがだろうか。
- 作者: 橘玲
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2017/11/17
- メディア: Kindle版
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