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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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変わりたくないを変えよう『限界集落株式会社』

この作品は過疎化の進む止村が舞台となる。高齢化や都市部への若者流出、とはいえ売りにできる魅力も無く、近隣の街からも煙たがられ村の住民は肩身の狭い思いをしている。それでも過去の栄光を経験している古参達は、今の状況を変えることを頑なに拒む・・・。

この作品はフィクションだが、現実でもありえそうな舞台だ、いやきっと具体的に頭に浮かんだコミュニティがあるはずだ。この物語は村が舞台になっているが、村だけではなく企業や店舗、あるいは学校法人にも状況を当てはめることができるのではないだろうか。

何かを変えるときには、“余所者”と“若者”そして“馬鹿者”が必要と言われる、本来であれば自助努力でお願いしたいという気持ちはあるものの、やはり何かを変えるときには新しい風が必要なのだろう。本作品でもしっかりと三者が登場し、止村を変えていく。

しかし、限界を迎えた集落というものは、名前負けをせず、実態は厳しい。外部からの信用もほぼゼロに近く、内側には縁故や付き合いのしがらみも多い。IT企業出身者、就農目的の若者達、ホステスは自らの行動によって複雑に絡まった糸を徐々に解いていく。はじめは小さなアイディアや行動だが、次第に住民も感化され、彼らと手を取りやがて自分ごととして動き出す。

本作品の面白いところは2点ある。ひとつは“こうしたらいいのに”という現代のアイディアを、フィクションの村だとしても実行し、前に進めているところだ。そしてもうひとつはすべてがうまくいっているわけではないというところだ。限界集落という舞台を等身大に受け止め、妥協点に着地する活動も少なくない。きっと何かを変えるには清濁併せ呑むことが必要なのだろう。それを知った上でそれでもなお変える勇気、変わる勇気を本作品は教えてくれる。限界集落株式会社 (小学館文庫)

限界集落株式会社 (小学館文庫)

脱・限界集落株式会社 (小学館文庫)

脱・限界集落株式会社 (小学館文庫)