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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】相次ぐ不祥事は、なぜ繰り返されるのか『日本型組織の病を考える』

 

本書は、2009年に著書自身が巻き込まれた、郵便不正事件の実態や昨今の相次ぐ不祥事、組織の問題点、公務員の役割りについて書かれている。著者は37年半の間、公務員として仕事をし、官僚のトップである厚生労働省事務次官まで務めた。またセクハラの研究会を日本で初めて作ったのも著者だという。

当時、逮捕のきっかけとなった郵便不正事件について著者自身が知ったのは、マスコミの情報からだったという。当事者さえも、何が起こったのかもわからない。

そのような状況の中でも、容疑をかけられて、あっという間に逮捕されてしまう。何とも恐ろしい世の中だと感じながらも、いつ、誰しも同じような状況に陥る可能性があるのではないかと思えた。

また、報道が加熱することにより、マスコミにも日々追われ、身を隠しながら仕事をする日々が続いたそうだ。そして、逮捕後はマスコミからは逃れられたものの、結果として約半年の間、未決囚としての拘置所生活を送り、そこでまた新たな闘いが始まったのだ。

しかし、著者は自らの好奇心の強さから逮捕初日より気を紛らわすことができたという。なぜなら、想定外なことが起きたときの対処法を学んでいたからだ。

それにより「なぜ逮捕されたのか」など自分で解決できないことは、考えていても仕方がない。今できることからする習慣を身につけていたという。

突然の不運な出来事が起きると誰しも出来事自体に翻弄されがちだ。そのような中でも冷静に物事を判断し見極められたからこそ、検事の書類改竄も見逃さず、結果として、無罪を勝ち取ることができたのだろう。

また、拘置所生活を送ったきっかけで、新たな社会問題についても知ることになったという。それは、生活困窮者の犯罪についてだ。

彼らは、お正月などを刑務所で過ごしたいがために、わざと万引きなどを繰り返す。刑務所に入れば、三食栄養のある食事がとれて、面倒をみてくれる人もいる。しかし、刑期を終え、社会に出てみると再び困窮という厳しい現実が待っている。すると、再び罪を繰り返し、刑務所に何度も出入りする「負の回転扉」になるという。それを遮断するためのサポートも行っているそうだ。

著者の物事の捉え方や考え方は素晴らしい「困難は避けられないが、対処の仕方は選べる。また、事件が自分の世界を広げてくれた。勉強になった」と考えられる著者に感銘を受けた。

世の中で起こる事柄は、その人の捉え方次第である。本書を読むことにより、世の中の実態が著者の経験を通して、理解できた一冊である。