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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】『結果を出すチームのリーダーがやっていること』

著者は、JTC(Japanese Traditional Company)、伝統的な大企業を36年間勤め上げた管理職である。
在職中、12万人の社員の中から100人だけ選ばれる社長賞を4回受賞した記録を打ち立てた。
この実績からもわかるように、難航する巨大プロジェクトの立て直し、新規事業の立ち上げ、新部署の発足など、管理職として組織に貢献してきた。
本書は、著者がチームを統括しながら体現した「結果を出すリーダー」の在り方や「信頼を失う行動」について、エピソードを交えながら紹介している。
特に印象に残った2つのテクニックを紹介する。
1つ目は、「『年間1000万円までは君の裁量に任せる』と権限委譲する」である。
著者が勤務していた会社は、権限の基準が曖昧だった。
課長だから〇〇万円、部長だからプロジェクト予算の〇%といった決済権が定義されていなかった。そのため、予算を使う際は上司に報告して判断を仰ぐ必要があった。
著者がリーダーとしてチームを率いた際は、特定のメンバーに年間1000万円までの裁量を与えていた。
こうすることで、確認が不要になり、担当者、上司の生産性を向上させていた。
何よりも大きかったのは、権限委譲されたメンバーが自分で考えて行動するようになり、チーム全体のパフォーマンスが高まることである。
2つ目は、「気分を衰えさせる掲示物を排除する」である。
著者が訪問した企業に、「エレベーター移動中の会話厳禁」「移動はテキパキと」「私語最小限」など、小・中学生に向けたような張り紙が掲示されていたという。
このような掲示物が多い企業は、上意下達の傾向が強く、社員は指示された仕事をこなすだけになり、ボトムアップの力が発揮されにくい。
結果を出すリーダーは、上からの指示をメンバーに伝える際、指示の意図や目的を解説して、具体的な手法をメンバーに検討させる。
こうすることで、現実的な達成方法や問題点が明確になるほかに、メンバーのやる気が高まって目標達成に向け一丸となれる。
つまり、トップダウンボトムアップの両方を上手に使える、チームを成功に導くカギなのである。
本書では他にも、1000人規模の巨大プロジェクトを束ねる裏での苦労話。
「仕事とプライベートを切り分けたい部下」との意見の違いなど、時代とともに変わりゆく社内コミュニケーションの変遷が述べられていて、大いに参考になる。
1000人規模のプロジェクトを束ねるポジションに就くサラリーマンは多くないが、彼らの視座を持っことは、管理される側にも大きな助けとなるだろう。
また、プロジェクトを任される前にマネージメントについて考えておくことは大きな助けとなるはずである。
作  者:五十嵐 剛
発売日:2024年5月21日
メディア: すばる舎