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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】超高齢化、日本の歪『寿命が尽きるのか、金が尽きるのか、それが問題だ』

著者は、両親を介護するためにUターンしたブックライター。
実家に戻った著者に待ち構えていたモノは、月8回の病院への送迎、付添、介護。
もちろん、それで済む訳もなく、冷蔵庫内に放置された大量の賞味期限切れの破棄や半ゴミ屋敷の片付けなど、自宅に溜まったあらゆる問題を片付けることになった。

90代の両親は身体が不自由で耳が遠い、認知症が進んでいるのに口だけは達者。
「白焼きが食べたい」「腰が痛い」「病院に連れて行け」自分の主張を声高々に訴え、要求を拒むと逆ギレ。
要求に沿った対応をしても感謝の言葉はない。
鍋に火をかけている際中に来客があれば、鍋を焦がして火災の原因を作り、買い物に行けば、大量の食品を買いこんで捨てることを繰り返す。
ときには、家族に相談することなく畳の入れ替えを業者に依頼したこともあったそうだ。
道理が通じない相手と同じ屋根の下で暮らす介護者の苦労に啞然とした。

お互いの時間を作るためにデイケアを活用するには、面談を受けて、一定の条件を満たした診断書が必要となる。
介護施設に入所させるには、要介護認定を受ける必要があるうえに、入居先を探しだしたあと、年金で賄えない費用を毎月切り崩すことになる。
当然ながら、それらのサービスを受けるには、手続きに忙殺される。

厚生労働省は、「団塊の世代後期高齢者になる2025年に35万人、2040年は69万人介護を担う人材が不足する」と発表している。
つまり、介護ロボットが普及しなければ深刻な人手不足に陥り現場は立ち行かなくなるのである。
「お年寄りを大事にする」は倫理的に正しいことであるが、国が抱える医療費、介護費の増加、全ての産業に波及する人手不足を考えると、手放しで薦められるものではない。

24時間手のかかる介護、介護者は何年もシンドイ思いを強いられ、介護される側も老いが進むことで人間の尊厳が失われ、惨めになる。
要介護者が長く生きることは、家族だけでなく年老いた本人にとっても不幸なのである。
これを避けるには、適切な健康管理を継続するしかないと考える。
国民一人一人が健康寿命を延ばすことに目を向けなければ未曾有の国難を乗り切ることが難しい。

『寿命が尽きるのか、金が尽きるのか、それが問題だ』
作  者:こかじ さら
発売日:2022年11月19日
メディア: WAVE出版