独特なタイトルだろう。幸福になりたいのは、みんな同じである。だからこそ、みんなは幸せになろうとする。理想の恋人を探したり、ケーキを食べたり。幸せになろうということに躍起になっている。その流れに乗ったのだろうか、最近では「ストレスフリー」だの「ポジティブ思考法」といった本が書店に行くと、ずらっと並んでいる。しかし、この本の著者であるラス・ハリスは、「そもそも何でそんなにみんな幸福を追い求めているの?」を問い直したのだ。そして、彼は、多くの人が勘違いしてることを「幸福の神話」として冒頭で紹介している。僕も、実はこの神話に取りつかれていた人間の一人で、この神話が原因で今まで苦しんできたのかと腑に落ちた。今回は、この本について紹介する。
先ほども書いたように、この本では幸福の神話について書いている。その内容を一言で言い表すと「そもそもみんな幸福であるのがデフォルトとなってるから、そんなに苦しむんでしょ?」である。これを読んだとき、僕ははっとした。「確かにその通りだ」と。つまりはこうだ。まず、「幸福な状態が正常で、それ以外は異常である」と思っている。そして、何か嫌なことにがあると、「これは幸福ではない。故に、悪いことであり、避けなければいけない」と思っているのだ。要は、多くの人はそのような見方を持っているので、苦しんでしまうのだ。だから、幸福のためには感情をコントロールしなきゃだめだ、と思い込むようになってしまうのだ。このように解説している本はそこまでないだろう。第一、世間には「こうすれば幸福だから、みんなそうすべき」という押しつけにも近いものがある。それも苦しむ原因だろう。
そして、本書ではそのような思い込みを避けて、自分の人生を生きるためにはどうすればよいのかを、240ページほどにわたって、解説しているのだ。しかも、章ごとに実践できるようになっているので、だいぶ読みやすくもなっている。その中で僕が恩恵を受けたのが「自分の価値観を明確にし、それに従うこと」である。僕の価値観は「本を読んだり数学を勉強したり、運動することを通じて、自分を高めることが大切」「勉強が嫌いという人にアプローチして、勉強で世の中を救うことで貢献するのが重要」「なんでも新しいことを吸収して、人生を自分で切り開いていくのは欠かせない」という価値観がある。僕は最近この価値観、信念をもとに行動している。そのようなことを、本書のワークを通して、発見することができたのだ。そのようなこともあるため、この本をぜひ読んでほしいのだ。
著者であるラス・ハリスは、医師であり心理療法士でもある。自分自身でもこの心理療法をつかい自分の人生を切り開いてきた。この本には、「不安に悩まされたときはチョコチップを5袋たいらげた」なんてエピソードも載っている。そのような点で、多くの人の目線に経っている。かなり共感できることもある。この本は、不安症や心配性なひとには、かなりお勧めだ。
この本は、メンタル面で自分の生活の基盤を作ることができる。読むだけではなく、実際にやる本なのだ。理論は使ってしまったほうが手っ取り早い。ぜひ、本書を通じて、何度も実践してみてほしい。僕も実践している。だからこそ、この書評を書き、本を読み、数学の問題を毎日解いている。
参考文献
ラス・ハリス(2015~2020)『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』岩下慶一(訳) 筑摩書房