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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】共感しすぎて疲れやすい人が無理せずに生活する方法『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』

 皆さんの周りに、時々こういう人がいないだろうか?人混みに行くだけで気分が悪くなる、すぐに泣く、いつも恋愛では変な人と付き合っている、自分の感情を言ってもいないのにドンピシャで当ててくる、という人である。僕の知り合いにこのような人がいた。感情を読み取る能力が文字通り高く、多くの人に話しかけられる人だった。今はその人とは連絡を取っていないが、話していたころは「なぜ手に取るようにわかるの」と常々疑問を持っていた。本書を読むまでは。この本は、上記のように、共感力がやたら強く、感受性もずば抜けて高い人について、精神科の先生が書いた本だ。筆者であるジュディス・オルロフは、このような人々に「エンパス」と名前を付け、エンパスの人が行きやすくなるにはどうすればいいのかを探している。エンパスは、まだまだ研究が始まったばかりの分野で、分かっていないことも多いという。しかし、エンパスの傾向を持っている人たちは、彼らなりの苦労を抱えている。そして、同時に「とても想像力豊か」という強みも持っている。本書は、そのようなエンパスの特徴と対策法をふんだんに盛り込んだ、バイブルのようなものだ。今回は、本書を読み、思ったことを書いていく。

 まず、共感しすぎることがメリットであることが多い、ということが挙げられる。共感力が高ければ、相手の感情を理解できるし、コミュニケーションもスムーズに行く。共感力があるため、優しく、相手の言うこともきちんと聞く傾向がある。それは、感受性が高いことによる恩恵ではないのか。実際に、人間関係が人生の幸福度を決めるというデータも出ている。なので、人さえ選べば、エンパスは人間関係で幸せになれるのである。故に、周囲からみて「気にしすぎ」だと言いたくなる特性は、ずば抜けて高い感受性と共感力の裏返しだ、とわかる。なのであれば、弱いということにはならない。その強みを上手に使えば、うまく今の刺激過多の世界でも、難なく暮らしていくことができる。そのことを本書は教えてくれるので、かなり心強いだろう。僕はエンパスというよりはASD傾向のほうが強いが、この本の知識を実践している。例えば、運動や瞑想だ。僕もエンパス傾向の人同様、緊張しやすい。それを暮らしやすい程度まで改善するために、体を鍛えたり、内面を見つめたり、ということを毎日やっている。おかげで、今では、難なく生活できている。

 もう一つ、これは上記のこととも関わってくるのだが、本書から「自分の傾向はある程度把握しておく必要がある」ということを改めて学んだ。人間は確かに自分のことについて、わずか10%ほどしか理解していない、というデータは存在するものの、自分をある程度把握する行為というのは無駄にはならないだろう。例えば、人混みに行って頭痛を催しやすいことが分かったら、「人混みを見つけたら、回り道をする」というルールを設定してもいいだろう。このような対策は、自分の特性をある程度把握していないと、設定することもできないし、実際に行動するのも難しくなってくる。故に、ビッグ5(科学的に最も信憑性の高い性格診断)を使ってみたり、自分の感受性などを分析するのが欠かせない。例えば僕の場合は、緊張したらその緊張に意味を考える、という行動を設定している。緊張するということは、要は体が問題の解決に向けて反応しているということになるからだ。このように、自分の関わっている特性について知っておくことは、とても重要だ。

 この本は、タイトル通り、共感しすぎて疲れる人に向けた本である。他人の感情の影響を受けすぎるという人や、周りの音やにおいに敏感という人にはうってつけの本だろう。エンパスではない僕にも学べることがあるのだから、エンパス傾向を持っている人には必読と言えよう。また、この分野は研究が進んでいないので、現時点ではもっとも頼りになる本である。

 僕自身、感受性が高く敏感で、更に不安になりやすく落ち込みやすいという、一般的に見ると生きづらいような特性を持っている。しかし、そんな僕でも、対策すれば暮らしていける。エンパスについても知れる本なので、多くの人に読んで欲しい本だ。

参考文献
ジュディス・オルロフ(2019~2020)『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまうがなくなる本』桜田直美(訳) SBクリエイティブ