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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】感動してしまったら人は容易に道を踏み外す。『漫画原作者・狩撫麻礼 1979-2018 《そうだ、起ち上がれ!! GET UP . STAND UP!!》 』

私にとって、彼の作品との出会いは衝撃を通り越して、って言うか、なんと言っていいか分からない位のものだった。
狩撫麻礼漫画原作者である。
この名前、”かりぶまれい”と読む。カリブ海とボブ・マーレイを合わせたペンネームだ。
初めて読んだのは、谷口ジローが作画を担当した『青の戦士』。どうやら狩撫麻礼初の本格連載作だったらしい。
そこに描かれていたのは、主人公のボクサーのストイックな姿などといった通り一遍のものではない。世間と折り合いを付ける気がさらさら無い男の物語の様に見えた。
それからは、『ルードボーイ』、『ハード&ルーズ』、『LIVE! オデッセイ』、『ナックル・ウォーズ』、『ライブマシーン』、『POWER FOOL』、『B』、『唇にブルース・ハープ』、『Days 時の満ちる』、『バトルキッズ』、『ア・ホーマンス』、『迷走王ボーダー』などなど、状況にスポイルされることを拒んで遁世し、なんらかの感動を以て契機とし、道を踏み外す人物たちの物語を片っ端から読んでいったのだ。
1990年頃からは、漫画自体にあまり食指が動かなくなり、実に散発的にしか読むことはなくなっていたが、反時代、反体制の作品スタイルは忘れられなかった。
その狩撫麻礼も、2018年1月7日、享年70歳で亡くなった。
本書は、漫画家・小説家・映画監督・編集者・読者たち60数名の狩撫麻礼からバトンを渡された人たちが、漫画・イラスト・文章・対談・インタビューなど、なんでもアリで故人を語る異例の追悼本だ。
皆さん、この難解な作家についてそれぞれが想うところを述懐している。なかなか膨大な資料ではある。

私は、これまで作品以外には彼の人物像など殆ど知ることがなかったのだが、実は私にとっては正直言ってそれはあまり重要ではない。作品に登場する主人公たちを見れば、それは或る程度想像がつくし、却って作品イメージを削がれることになっても困る。
映像化も何作かされているとはいえ、決してどメジャーとは言えない故に、狩撫麻礼作品自体がどう評価されているのかということを、ハッキリと目にする機会があまり無かったので、彼の作品に”出会ってしまった”人々が、何を感じ、どう受け止め、毒されてしまったのか。そこが知りたいポイントだ。

狩撫麻礼と交流が有った人は勿論だが、全く面識が無い人も多数本書には登場してくる。
それは多少の驚きを私にもたらすと共に、作品を通じて感じた、あの"黒さ"を彼らと未だに共有しているのだと思わされたのだった。
なんてこった。俺はまた毒されている・・・。
1990年代以降、遠ざかっていた狩撫麻礼作品。再びあの沼に入り込んでみようか。

 

《そうだ、起ち上がれ!! GET UP . STAND UP!!》 
作者: 狩撫麻礼を偲ぶ会
発売日:2019年7月24日
メディア:単行本