タイトルや表紙からは一見わかりませんが、著者は曹洞宗のお坊さん、禅僧です。
「自分とは何か」まずこんな哲学的な話をしてくれます。
自分というのは、たまたま生まれ、他人からの承認によって存在しているもの。
このような「たまたま」存在する人生、力まずに生きる方法を仏教の考え方をベースに教えてくれます。
冒頭から、私たちが普段なんとなく持っている価値観を打ち砕いていきます。
“自分を大切にする”
“置かれた場所で咲く”
“夢や希望を持つ”
こういったことを「ポン」と否定してくれるのはなんだか小気味よく、どうしてそう言うんだろ?と気になってページが進みます。
また、本書の中には具体的な悩みや相談の話が出てきます。著者の南さんはかれこれ20年以上、相談したいという人々と対話をしてきたのだそうです。
リアルな悩みと、それに対する南さんのアプローチや経験談は参考になります。
例えば、90歳間近の父親を一人で介護している息子さんの話。父親には障害がありますが、介護サービスなどは一切受けつけず息子さんによる介護を望んでいて、息子さんは追い詰められてしまっている、とのこと。
このケースでは、南さんは「思いやり」とか「愛」「努力」ではなく、どんな間柄でも人間関係は「利害関係」「力関係」が働いていることを考えるべきだと書いています。
そして、こういう時につい持ちこんでしまう感情をどのように扱えばいいか、続けて提案してくれます。
偶然手に取った1冊でしたが、最近興味を持っている仏教に関連する本だったので個人的にはとても嬉しかったです。
そして気になった見出しから読んでも問題ないところも読みやすい。
人間関係にちょっと疲れている方や解決しない問題がある方に、ゆっくり読んでみてもらいたい一冊です。