土地の相続に悩む親子が賃貸アパート経営をしようと決断し、著者である椿内氏のもとへ相談しに訪問することで話が始まる。
著者は30年間にわたり土地オーナーへアパート経営の提案を行い、これまでに2819戸の賃貸アパートの建築実績を持ち、物件の建築請負、販売を行っている。手がけた物件の入居率は99.2%と高い実績だ。本書ではそんな著者の豊富な経験の中で導き出した「賃貸アパートを成功させるための勝利の方程式」を3人の会話形式で順を追って解説されている。
地主さんによる賃貸アパート経営には失敗例も多いという。共通の原因としては「賃貸アパートを建てさえすればうまくいくと考えていた」という賃貸アパート経営の取り組みへの甘さだ。人から言われた、業者に紹介された等、他人のアドバイスにただ従って決めてしまった地主さんにありがちなパターンだそうだ。著者は「賃貸アパート経営は会社経営と一緒である」と述べている。最初にしっかりとした長期事業計画、毎月の収支管理をしっかりとやれば、かならず黒字になるそうだ。
個人的に思ったことは、相続に悩む地主さんはおそらく高齢で賃貸アパート経営に関しては素人であろう。相続の問題が急に発生し、知識をつける時間もないまま他人から言われるまま経営を初めてしまう、といったパターンが多いのだろうと思った。この本を読むことで「まずはしっかり知識をつけることと、会社経営するくらいの覚悟が必要なんだ」と認識することができる。これだけでも失敗するリスクは軽減されるだろう。
土地の相続問題に直面している人は、業者やメーカへ相談に行く前に、予備知識と心構えを習得するために必須の書籍である。または、うまく土地を活用して将来の資産にしたいと考えている方にもとても参考になる本だと思う。人生百年時代となる今後の日本、将来の資産形成の一つとして賃貸アパート経営も視野に入れておくべきだ。