本書は3部構成と非常に分かりやすい、タイトルにもなっている第2部のアンティークコイン投資が大半を占めていて所謂、初心者本ではなく投資とはなんぞやと詳しく教えてくれる本ではない。対象は主に富裕層で新たなポートフォリオの一つとして考えてみても良いのではないかという内容だ。
著者はコイン収集歴50年を超える収集家だ。アンティークコインの材質や歴史、国や地域ごとの流通量、相場価格、デザイン、どの様な状態のものが高く評価されるのかなど詳しく解説してくれるコインの写真も多く載っているので状態の比較もしやすい。その他にも現物投資の難しさや売れるまでにかかる期間、手数料の高さ、査定会社によって評価額が異なる事、コインを買う上での知識や歴史観、投資をする上での最低限の知識さらには価値の低い物を買わないための審美眼が要求されることなどが書かれており株式投資とは違う世界を知ることができる。
だが読んでいて最も重要だと感じたのはあくまでも投資と割り切るドライさが必要だという事だ。骨董品は趣味的な側面も強く収集家が多く存在する。オークションなどで予算以上の額で競り落とすなどは避けなくてはいけないし、他の骨董品と比べ流通量の多いコインは投棄目的で買う人も多く実態とかけ離れた価格が付きバブルになる事ある。そうなると売りたくても簡単には売れないので含み損になってしまうのだ。とは言え骨董品の強みは長期所有できる事でありそれを前提にして相続させる事も予め考えておく事を本書も薦めている。
本書は富裕層などの投資経験者が株や債権、不動産以外の分散投資先として現物投資の一つであるアンティークコイン投資を薦めており投資初心者や資金に余裕のない人は下手に手を出さない方がいいだろう。現物投資は流動性が低くすぐには換金できないからだ。ただ投資には興味はあるけどリスクを考えると出来ない人は知識ばかり溜め込んでいく様な投資本を読むよりも本書の様な本を読んだ方が有益な知識が身につくのではないだろうかと思う。
アンティークコインという富裕層向けの投資であるからこそ株やFXにはない魅了を感じることができた。リーマンショックやコロナ、ウクライナ戦争など経済危機は常に隣り合わせだ。日本経済の見通しも暗い今後は一層慎重にポートフォリを組む必要があるだろう。アンティークコインを入口にて現物投資の世界に入ってみてはどうだろうか。
アンティーク投資
著者:田中徹朗
発売日:2022/2/28
メディア:単行本