文系の天才、小林秀雄氏と理系の天才、岡潔の2人の対談、というか雑談が繰り広げられる。天才同士の雑談というフリースタイルが故に余りにも内容が濃すぎる。私はほとんど理解出来なかったが、この雑談は感性が問われるのだけは感じた。いっその事、全くわからなければ素読をお勧めする。それだけでも十分に価値がある。
雑談内容は学問、酒、アインシュタイン、美術や俳句など多岐にわたる。2人とも本質を捉え、それぞれの視点から話すが、内容は自然と噛み合う。50年以上前の雑談にも関わらず、現在にも通づるものがあり、普遍的で日本人ならではの感情の機微も感じる。特に感銘を受けたのは美的感動について、本物の絵画よりも複製に感動した話、色々と考えさせられる。また岡潔氏が話す「情緒」については正に人の真理と個人的には感じた。
本書の最後にこの雑談について脳科学者の茂木健一郎氏が解説している。脳科学者の目線から話される感覚や脳に絡めた話が面白い。茂木氏の解説を読んだ後にまた読むと違った感覚が生まれる。こういう楽しみ方もあるのかと。
天才2人の雑談だけではなく、茂木氏の解説まで収録された本書、本当に内容が深く、値段も安いのでコスパが良すぎる。本書は時間をかけて少しずつ理解を重ねてさらなる感動を味わいたい、そうさせる魔力を持っている。