「他者と働く」というタイトルに惹かれた。なぜかは分からないが、漠然と「他者と働く」ことの答えをこの本が教えてくれそうな気がした。ちなみに副題は「分かり合えなさから始める組織論」。「組織論」と書かれているだけあって、個人に留まらず分かり合えない組織同士の問題も取り扱っている。
世の中には情報が溢れているのに、なぜ個人同士、組織同士の衝突は絶えないのか。解決策が無いからではない。人や組織の「ナラティブ(物語)」が異なるからだ。ではどうすれば良いか。本書ではそのナラティブ・アプローチが詳しく語られている。
乱暴にも本書を一言で言ってしまうなら、「相手の立場で考えよう」だ。そんなの小学生でも知っている。しかし、実践できないのだ。電車の乗車を並ばない人に対しては腹が立つし(今日の私)、話の長い上司にはイライラするし(今日の私)、集中している時に電話をかけられるとまたこの人かと小馬鹿にする(今日の私)。勿論聖人君子になろうとは思わないが、仕事を進めようと思ったらどこかで必ず衝突が起こる。そんな時に相手の立場に立って考えられると、お互い気持ち良く仕事が出来たりするのだ。
オススメするのは、「仕事仲間を道具だと思ってませんか」という問いにピクッと反応した方。「そんな冷たいことしない!」と胸を張って言えますか?私は言えない。ちなみに本書でも道具として扱うことを否定していない。時と場合によっては道具として扱う方がスムーズなこともある。しかし、全てがその調子だと必ずナラティブの罠に嵌まり込む。そんな自覚が少しでもある方には是非読んでほしい。
楽しく他者と働こう。