HIU公式書評Blog

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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】私たちはビジュアルデザインに取り囲まれている。『ビジュアルデザイン論―グーテンベルクからSNSまで』

 

欧州発のデザイン書のベストセラーなのだそうだ。
著者であるRICCARDO FALCINELLI(リッカルド・ファルチネッリ)は、グラフィックデザイナーやデザイン理論家として超一流の人。
イタリアの主要な出版社でのデザイン活動を行ない、知覚心理学の教鞭を執り、国際的グラフィックマガジンの『グラフィックデザイン』の共同ディレクターでもある。そして、これまでのデザインに関する幾つかの著作もイタリアでベストセラーになっているのだという。
おしえて!えらいひと。
と言うことで、本書は、多角的なビジュアルデザインについての考察を網羅的に、そして古くはローマ時代から現代にまで、時さえも股にかけて語りかけてくる。
その語り口は冷静にしてロジカル。しかし時にはシニカルにデザインに対する示唆も放つ。
かなりの量の知識が詰め込まれているので、デザインだけではなく、マーケティングブランディングに興味のある方々にも、純粋にもの凄くタメになる一冊である筈。

しかし。
私がこの著作を手にした動機はなんであったのかというと、実はデザインという面から現代ビジネスにもたらすものが何やら書かれているのではないか、つまりビジネス本なのだろうと思ってのことであったが、それは全くもって当てが外れた。
なので、正直言うと、読み始めて即、「これはしまった」と思ったが、こうなっては仕方がない。ちゃんと読了しなくては。途中放棄という選択肢はないのである。
とはいっても、デザインについてボンクラな私にでも、本書からの学びはちゃんとあった。
私がなるほどなと面白く感じたのは、広告や本の表紙、ミュージックビデオなどだけではなく、例えば鉄道の時刻表、銀行口座の明細書、下着のタグなど、美的な作品以外にもビジュアルデザインは入り込んでいるという事実と、その観点だったりする。
2センチ幅に収まるように織られた洗濯表示も、誰かがデザインし、あらゆる条件や目的のもと適切な選択を経て完成されたグラフィックのプロジェクトなのだというのである。
それからもう一つ面白かったのは「書体」の変遷である。ローマの昔から殆ど変わっていないアルファベット。しかし版画から始まる印刷技術の進歩と歩みを共にし、次第に様々なフォントが生まれ、流行とスタンダードを並行して作っていく様はなかなかに興味深かった。

本書の意図するところは、手段を所有しているだけでは不十分であるということだ。
「デザインの理解とは、その表面的な形態を認識することではなく、デザインが誰のメッセージを伝えているかを知ることなのです」
眼差しのために設計されたものすべてが用いる伝達手段と知識の考察。
あらゆる意味からのデザインを論じている本書は、センテンスの数がもの凄く、ページ数もこれまた凄いボリューミーなのであるが、デザインの本質を理解したい向きにはお薦めである。

はぁ〜、やっとこさ読み終わったぜ。