本書は、自称”冴えないおじさん”の著者が、会社の隅っこに追いやられて日々を生きる世のおじさんたちに向けて、地味ながらも幸せにこの世の中を生き抜く術を書いたものである。
40代半ばにしても課長になれず、窓際係長に留まっていた冴えないおじさんが、人生挽回した「世界一地味な方法」。それはタイトルのとおり、「地味な資格を取る」ことだった。では地味な資格とは何なのか。それはずばり「法人に必要とされる資格」「一般の知名度は低いけれど、実は稼げている資格」である。
具体的に、地味な資格として本書で挙げられるのが「社会保険労務士」「行政書士」「宅建士」などだ。
士業の資格は努力に対してリターンが大きい「コスパ」のいい資格なんだとか。努力次第では年収1000万円に達することも可能であり、また対応範囲が広いため、ニッチなブルーオーシャン分野を開拓できる可能性も高く、より大きなリターンが見込める。学習時間や難易度は少し高くとも、取得後に仕事につながりやすく、努力するだけの価値は十分にあると言えるのだ。
本書の優しいところは、ただ資格を取ることを勧めるだけでは終わらないところである。「地味な資格」を取ることが有効である理由からはじまり、忙しい社会人に適した勉強法、勉強を継続するためのモチベーションを維持する方法、そして資格を活かして仕事を見つけ、稼げる人になるための方法までを網羅的に、具体的に教えてくれる。著者の成功体験も失敗体験も赤裸々に書かれているので、本気で資格を取ろうと考えている読者には非常にありがたいつくりになっている。
そして気をつけなければいけないこと。資格というものの恐ろしいところは、合格したら満足してしまうところである。試験の合格は目的ではなく通過点であることを忘れてはならない。真の目的は、手に入れた資格で安定した生活と収入を手に入れること。つまり最も大事なのは資格を取ってからの行動となる。資格取得後に取るべき行動も、本書では抜かりなく教えてくれる。
おじさんに限らず、資格を取ってそれを活かしたい人、人生の方向転換をしたい人は読んでみてはいかがだろうか。