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堀江貴文イノベーション大学校(通称HIU)公式の書評ブログです。様々なHIUメンバーの書評を毎日更新中。

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【書評】死んだ後にのこすものとは何か。『人生何を成したかよりどう生きるか』

 

”天地は永遠で、始めも終わりもない。人間には生死があり、人生には限りがある”
江戸後期の漢詩人である頼山陽の言葉を以って始まる本書は、日本を代表する思想家 内村鑑三の名著『後世への最大遺物』のメッセージを、現代の読者に届けたいという思いから生まれた。
その内容は、夏休みに若者たちを集めて講演した著者の言葉であり、100年以上前のものである。

二日間に分けた講演。そのテーマは、「この世にのこすべきものとは何か?」
一日目は、まずはお金、そして事業をのこすことだと語る。
キリスト教信者である著者は、お金や事業などのことを口にすると信者からそしりを受けるのだが、それは間違いであると主張する。
欲を持つのはいけないことなのか。
少しでも世の中をよくしたいと思うのであれば、「清らかな欲望」を持ち、死んだ後にのこすものを創造してよいのではないか。
第一にのこすべきもの。それはまずはお金であり、第二にのこすべきものは事業であろうと言い、それぞれ如何に尊いものであるかについて述べている。

二日目は、お金や事業はのこせなくとも、だれもがのこせる唯一のものがある、と説く。それはすなわち思想であり、これが第三にのこすべきものであると言う。
思想を文字にして後の世にのこすことで、世の中のためになる。自分と関わりを持たぬ人々にまで影響を与えることが可能になる。文学は自分の死後も戦い続けてくれるのである。数ページの詩が永遠に人を励まし続けることだってあるのだ。
そして、講演は最後に著者が自らの信念を語って終わる。
それは、「信じる思想を実際に積み重ねて、真面目な一生を送ったという事実を後世に遺したいと強く願っていることあると言う。

何故、今この本が必要なのか。
当時は明治維新後の激動の時代。そんな時代に生きるなか、自分は恵まれてはいないと思っている人たちに向けて、どう生きていけばいいのかということを、徹底的に弱者の視点に立って書かれたのが本書であり、時を経てもその言葉の持つ意味や輝きが陰ることは無い。コロナ禍のさなかに於いて尚更生きる指針を見失いがちになってしまう時こそ、変わらぬ真理を知ることは大切な事であろう。

 

 

人生、何を成したかよりどう生きるか

人生、何を成したかよりどう生きるか