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【書評】信用力で天下を取った家康『関ヶ原』

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 天下分け目の戦いが行われた『関ヶ原』。そこには、石田三成VS徳川家康をめぐる諸侯の複雑な思惑が絡んでいました。歴史の転換点を往年の名作家、司馬遼太郎が描いた時代小説です。

 それだけだと名作とはいえ、普通の時代小説です。僕も10年ぶりにこの本を読むまで、石田三成への感情移入だけで読んでいました。しかし10年ぶりにこの本を手に取ったとき感じ方が全く変わったのです。

 どう変わったのか。それは今までと逆の
「家康スゲェ!」
ということでした。

まず、豊臣家の忠実な官僚である石田三成は、日本列島の東西から中央の家康を挟み撃ちにするという前代未聞の大計画を考えました。しかし、大きな計画にはいろんな変数が入ることで穴が無数にできるもの。まして連絡手段のない時代なら計画には齟齬がつきものです。その穴を家康はことごとく突いていきます。

 家康はどういう手法をとったでしょうか。実は単純です。まず信用を積み上げたのです。家康は自分の天下取りのチャンスが秀吉の死後にしかないと気づいて戦略を立てたのです。それは「恩を売る」という戦略です。秀吉だけでなく、他の大名にも愛想よくその人の利益になることをしたり、キーパーソンをおさえたりしていきます。

対する三成は風紀委員のようなタイプですから、あまり人には好かれません。秀吉の死後、豊臣政権は二分されます。
「どっちについていくか?」
「そりゃ家康さんですよ。」
 という人が蓋を開けたら圧倒的だったのです。

いわば、関ヶ原というのは信用力を積み上げた家康の精算の場だったのです。その後
「話が違うじゃないか」という声が出ても、当然、家康は天下人におさまります。

 「汚い」と中学生の僕は家康のことをそう思いました。しかし本当にそうでしょうか。家康は苦手でも信用を積み上げることを日頃から継続して行い、大芝居をするときも、強力なサクラを準備しました。そういう強かな根気強さを見習わないといけないと思ったのです。せっかくやりたいことがあっても、小さいことをコツコツ積み上げていくことと信用力を失えば、絵に描いた餅になる。
 
一度読んだ人もそうでない人も、信用力で天下を取った家康という視点で読んでみたら、いろいろと発見があると思います。
 

 

関ヶ原(上)(新潮文庫)

関ヶ原(上)(新潮文庫)