「納豆は、腐敗しているのか、それとも発酵しているのか?」、さらには「円周率(π)の数値の列から未来のノーベル賞対象論文を探す方法」など、普段考えたことがない内容を事例として、著者の思考方法をトレースしながら、モノゴトの神髄を理解する方法を解き明かしていく。
思考とは、「もしも○○だったら」という好奇心から未来や現在を考えるところから始まる。この時、思考の土台として普遍的なものを基準にすると良い。例えば、熱は熱いところから冷たいところに流れるなど。
一方、社会常識や風習など、見えやすい表面的な事実や現実を元に思考すると、少し環境が変わった途端に役にたたなくなる。私自身はこの箇所を読んでコロナウイルスによる社会の変化を思い出した。
次に、「思考」とは似ているモノとの差分で深めていくもの。未知のモノゴトを考える際、既に理解している似ているモノと比べて予想する。この時、複雑な事柄が、「何かと似ていることに気が付く」には、同じくらい複雑な事柄に深く関わった経験が必要だ。普段から考えないで生きていると、どんどん思考できなくなる気がして私は怖いと感じた。
さらに、「思考するためには感情や信念が必要だ」という。
もちろん、思い込みにより思考を間違うことや見落とすことはある。しかしそれよりも、何かのタイミングで気付き、思い込みから解消された時の楽しさや最後まで思考続ける力として、感情や思い込みが必要だという。特に、新たな未知なる可能性を見出すためには思考し続けることが必要で、そのためには感情や信念が重要。
では、「思考」が出来たとして他人の頭のなかは分からない。それでは、どのように他者に説明して理解を得るのか。
その方法が、「実験」である。実際に実験して証拠を見せたり、体験を共有することが最も理解につながる。実験ができない場合でも、計算問題の途中式のようなイメージで「思考」したプロセスを始めから説明することでロジックとなり理解できる。本書では上記の方法で様々な「思考実験」が紹介されているので、思考を他者に説明する方法としても参考になる。
この本は、変化の激しい現代において、表面的な情報ではなく本質をしっかりと思考し、理解して行動したい人におススメ。具体的には、企業のR&D、企画職などで、新しい何かを開発、計画、実行する方。また、この「思考実験」が出来ると他との差別化ができると感じた。私も開発職なので「スペックが…」とか言ってる場合ではない!
「思考実験」とはモノゴトの神髄に近づき、理解する方法。
本書では多くの「思考実験」の事例をもとに、モノゴトの一側面でしかない表面的な理解や思考ではなく、より本質で水面下にある現実を理解するための「思考」と、それを他者と共有するための「実験」に関して、何度も優しく力強く語りかけてくる。
日々の生活や仕事において、ググって知識を得て、対処して終わりにしている身としては、「思考実験を行う時間を意識的に作ろう」と思う次第。
みなさんも本書を読んで「思考実験」をしてみませんか。