本書は、スタートアップ創業者たちが、オムニバスで早稲田大学の学生に向けて連続講演会を行い、その講演サマリー及びスタートアップ企業の分析について書かれたものである。
とかく、第一章はスタートアップ総論として勉強になる。
スタートアップとは、早く成長することを意図して作られた会社のことであり、フリーランスや飲食店経営などのスモールビジネスは該当しない。VCからの調達、が一つの指標であるという。
日本企業に、イノベーションが必要な理由、そして大企業の中では、イノベーションを起こすことが難しく、それを担うのがスタートアップであること。大企業が悪いのではなく、新規事業開発の組織に与えられる権限や、事業創出に向いた人材確保の問題など、大企業の組織体質や構造としてどうしても限界があるということなのだと思う。
第二章からは、各成長ステージ別に類型化された、起業家たちの言葉が並んでいく。共通すると感じたのは2点。1点目は、起業の原点はアイデアであること。どれだけ成功したと言われるスタートアップであっても、最初はこういうサービスがあったらいいな、世の中がこう変わったらいいなという、創業者の課題解決アイデアから始まっている。それを事業計画に仕立て、周囲にぶつけながら軌道修正していく中で、資金調達に繋げていた。そして、2つ目は、テクノロジー、IT技術を使ったプロダクトであること。アプリ、ストリーミング、そのプラットフォーム等、エンジニアなしではスタートアップは成立しないということがよく分かった。
言ってみれば、スタートアップは日本の大企業に代わって、新規事業開発をしているのだろう。CVCというのは、新規事業の外部発注にも似た仕組みなのかもしれない。
そして、ミドルステージ、組織が50名を超えたあたりから、ヒトの問題に直面する。カルチャーフィットと、しきりにスタートアップ経営者たちが口にする所以はここにあるのだろう。ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスに立ち戻る時期なのだと思う。
ホワイトカラーおじさん、おばさんたちは、一度、スタートアップの仕事の仕方や意思決定の仕方について、体験してみるといいのではないだろうか。稟議ではなく、オープンコミュニケーション、荒削りでも前に進める推進力。そして、その逆もしかり。稟議は悪者ではなく、大企業を相手に仕事をするときのお作法だ。組織としての意思決定手段であり、一度ハンコを押した人はちゃんと味方になってくれる。
17人の侍たちが語る起業ストーリー。日本にもこれからもっとたくさんのスタートアップが生まれてくる予感がした。